北設楽地方における仕事着に関する調査研究 : 戦前〜現代までの仕事着の補助衣について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1.外被類は男女ともに戦前から戦後および現代にかけて大きく変化した.戦前は防雨,防雪用として大みの,しゅろみの,けらみの等重量のあるみのの着用からその後洋服形態の一部形式から二部形式へと変化し,素材は戦前の自家生産であるわら製品からゴムやビニール製品となり,現代ではナイロン等さらに軽い素材へと変化し,通気性,機能性共に合理化してきている.2.かぶりものの中で手ぬぐいは男女とも昔から作業時には必らず携帯し,防暑,防寒,汗ふき,けが等の包帯代りに用いた.男はねじりはちまき,ほおかぶり,女は姉さんかぶりが多いのは昔も今も変らない.また戦前,戦後にかけてかぶられた代表的な組笠にひのき笠,菅笠があるが,戦後は麦わら帽,せんとう帽,また布製の作業帽,ヘルメット等仕事の種類に応じてその着装方法も変化してきている.3.戦前のはきものはわらじ,わらぞうりから山仕事には甲かけ,津具足袋等の孝案,昭和初期頃から地下足袋が使用され,現代に至っている.水田用には戦後ゴムの田植足袋,30年後半から水田用長靴が使用され今日に至っている.4.はばきは女の場合戦前の一部形式の長着着用の際には着用したが,戦中戦後から現代にかけてもんぺやズボン等の二部形式になってからは着用しない.男では戦前の股引,乗馬ズボン形態では山仕事以外,はばきの着用はしない.現代での作業ズボンの際には足元の機能性やよごれ防止等の経済管理上より,はばき着用の機会が多い.5.うでぬき,手甲,手袋は山林作業時に体の保護や衣服の汚れ,破れを防止するためにつける.現代では作業に応じて軍手,ゴム手袋の着用がみられる.6.虫よけには戦前からの布製の"かこ"やわら製の"かだいまつ"が使用された.かこ等にみられる農民文化が今もなお名ごりをとどめて利用されているが,最近では既製の携帯用蚊取線香の使用もこれにあわせて多くみられる現状である.以上,北設の仕事着の補助衣の推移については新らしい仕事着への受容姿勢は極めて緩慢ではあったが,時代の流れと共に徐々に古くから伝承されてきた手製の補助衣は影をひそめ,合成繊維を主体にその形態も目まぐるしく変転した大量生産の既製の補助衣へと年次的に進行しつつ現在に及んでいる傾向が何れの地域にもみられる現状である.次第に消え去り忘れられていくであろうこれらの補助衣は農民の生活史でもあり,生活文化の名残りともいえるのではなかろうか,そしてこれらの変遷を孝究することは現代および将来の衣生活改着への基底を作るものと考えるものである.
- 1984-03-31
著者
関連論文
- 帯に関する研究(第1報) : 越原家所蔵の帯について
- 衣の系譜に関する研究(第5報) : 褌からビキニショーツヘ
- 衣の系譜に関する研究 : (第2報)力士のまわしについて
- 衣の系譜に関する研究 : (第1報)褌の系譜とその機能性
- 北設楽地方における女の仕事着に関する調査(第2報) : 戦後から現代までの変遷
- 北設楽地方における女の仕事着に関する調査(第1報) : 戦前を中心として
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第5報) : 洋裁教育およびブラウスに関する実態調査
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第2報) : 本学学生の実態調査
- ***の衣生活にしめる既製服の利用度の一考察(第1報)
- 海に生きる女たち
- 北設楽地方における仕事着に関する調査研究 : 戦前〜現代までの仕事着の補助衣について
- 小・中・高等学校の家庭科被服実習について(第1報) : 教科書を中心に
- こどものきもの(第1報) : 女児服に関する実態調査
- 和服の寸法設定に関する研究(第2報) : 大裁男物長着の着丈・揚下り寸法設定についての考察
- 婦人農作業衣に関する研究(第5報) : 動作時の着ごこちに影響を及ぼす部位の検討
- 婦人農作業衣に関する研究(第3報) : 必要ゆるみ寸法と既製作業衣の機能性との関係について
- 衿肩明についての一考察(第1報) : 体型とくりこし寸法の関係
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第5報) : ブラウスにおけるC.P.の体型別適合度
- 日本人青年女子の肌色の季節変化について : 名古屋地区における測定
- 和服に関する研究(第2報) : 既製和服の丈寸法と体型との関連
- 和服着装に関する研究(第7報)浴衣地と着装の実態調査
- 和服着装に関する研究(第6報) : 現代感覚の浴衣着装と意識
- 和服着装に関する研究(第5報) : レンタルの利用状況と意識
- 和服着装に関する研究(第4報) : ***の袴利用について
- 和服着装に関する研究(第3報) : 卒業時における和服の利用について
- 和服着装に関する研究(第2報) : 年末年始における和服の利用について
- 和服着装に関する研究(第1報) : 浴衣と帯の利用について
- 帯に関する研究(第4報) : 昭和20〜63年の裁縫書における付け帯の種類について
- 和服の寸法設定に関する研究(第1報) : 既製男物浴衣の構成寸法について
- 和服に関する研究(第3報) : 既製和服の構成寸法と体型との関連
- 和服に関する研究(第1報) : 既製和服に対する消費者意識と実態
- 現代における生活と衣服との関連について(第1報) : ***の被服購入状況の調査
- 婦人農作業衣に関する研究(第1報) : 東海地区における農作業衣の実態について
- インドネシア,スラウェシ島における衣生活(第1報) : トラジャ族の伝統的社会構造
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第4報) : スカートにおける体型別適合度
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第3報) : 下半身の体型分類
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第2報) : 一般婦人によるCommercial patternについて
- Drafted pattern とCommercial Patternの比較研究(第1報) : 学生に対する実態調査
- 運針作業に関する研究(第1報) : 運針が被服構成に及ぼす影響について
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第3報) : 原型比較およびドレメ方式による補正について
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第1報) : 短大家政科の実態調査
- こどものきもの(第2報) :学童服に関する実態調査
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第4報) : ブラウス縫製時間の考察について
- インドネシア,スラウェシ島における衣生活(第2報) : トラジャ族の伝統的社会構造と葬儀用衣装との関連
- インドネシア,スンバ島における衣生活(第3報) : 日常の衣服着装とその変容について
- インドネシア,スンバ島における衣生活(第2報) : 所有衣服と管理について
- 浜のくらしと祭り(第2報) : 三河湾をめぐる海村地域の祭り7例より
- 浜のくらしと祭り(第1報) : 繰糸祭・お糸船神事より
- 「イタコ」をする離島の女たち
- 衣の系譜に関する研究 : (第4報)腰巻の機能性について
- 衣の系譜に関する研究 : (第3報)腰巻の系譜について
- 婦人農作業衣に関する研究(第4報) : 既製作業衣の袖の機能性についての検討
- 婦人農作業衣に関する研究(第2報) : Kinesiologyから見た作業衣の必要ゆるみ寸法の検討
- 運針作業に関する研究(第2報) : 運針作業における技法分析について
- 帯に関する研究(第6報) : 越原家における名古屋帯の纐纈織について
- 帯に関する研究(第5報) : 昭和20〜63年の裁縫書における付け帯の構成について
- 帯に関する研究(第3報) : 明治〜昭和期の教科書における付け帯について
- 帯に関する研究(第2報) : 大正・昭和における付け帯について