和服に関する研究(第3報) : 既製和服の構成寸法と体型との関連
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1.幅の寸法構成では,前幅,後幅ともに各々4サイズの分布がみられ,前幅は23cmと24cmの2サイズが約90%,後幅は29cmが約80%と庄倒的に多く使われている.衽幅は15cmサイズが90%採用されている.しかし以上の前幅,後幅,衽幅の組合わせサイズでは, A, B, C, D, E, Fの6種類のサイズパターンの分布がみられ,中でもA前幅23cm,後幅29cm,衽幅15cm), B (前幅24cm,後幅29cm,衽幅15cm), C (前幅25cm,後幅30cm,衽幅15.5cm)の3パターンが多く,約90%使われている.2.丈の構成寸法と幅の構成寸法との組合わせサイズでは,高率を示した身丈群(すなわち155 cm, 160 cm, 158 cm)のどの袖丈寸法においても裄丈は64〜65cmまでが約70%をしめ,前幅,後幅,衽幅はA,B,Cの3パターンサイズが主流である.又低率を示した身丈のサイズ群では,裄は62〜64cmサイズで,身幅寸法では高率群と同傾向がみられた.3.次に既製和服のサイズを体型との関連でとらえると,前報に示した本学々生の体型計測結果にも見られたように,近年の若者の体型は,身長が高く,裄丈は長く,その割に身幅はせまい.一方,既製和服の身丈は,工技院成人女子20才標準体型に合わせて,従来の慣習サイズよりも長めのものが多く,身丈は体型に適合しているが,裄丈は本学の平均計測値66cmに対し,64〜65cmとやや不足である.しかし身幅寸法から算出される対応腰囲は,全国平均値及び本学々生の89cmを上回る92〜98cm向けのサイズが主流であり,裄丈及び身幅寸法は中・高年層に適合の焦点が合っている.この理由としては,(1)体型的にも中・高年層は和服の似合う年令である.(2)経済的にも高価な和服購の可能な年令層である.(3)肩幅と身幅寸法との差を少なく,袖付けの傾斜をゆるくして仕立てを容易にするとともに,中・高年層の体格に適合させている.(4)和服独特の調節可能な着装形式のため,身幅においては,大は小を兼ねることも出来,各自の体形に応じて自由に着こなすことができるため等の理由が考えられる.現在一部の企業では,和装の慣習から除々に脱皮したサイズ設定及び合理化縫製などが開発研究されているが,和服の総生産量に比べるとその量はまだわずかである.いずれにしても,痩身,肥満両体型のサイズ分布は少なく,この点が今後の既製和服のサイズ設定の課題であろうと考える.終りに,本研究の調査にあたり御協力下さった企業及び販売機関の方々並びに本学被服コースの学生に感謝いたします.
- 1980-03-31
著者
関連論文
- 帯に関する研究(第1報) : 越原家所蔵の帯について
- 衣の系譜に関する研究(第5報) : 褌からビキニショーツヘ
- 衣の系譜に関する研究 : (第2報)力士のまわしについて
- 衣の系譜に関する研究 : (第1報)褌の系譜とその機能性
- 北設楽地方における女の仕事着に関する調査(第2報) : 戦後から現代までの変遷
- 北設楽地方における女の仕事着に関する調査(第1報) : 戦前を中心として
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第5報) : 洋裁教育およびブラウスに関する実態調査
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第2報) : 本学学生の実態調査
- ***の衣生活にしめる既製服の利用度の一考察(第1報)
- 海に生きる女たち
- 北設楽地方における仕事着に関する調査研究 : 戦前〜現代までの仕事着の補助衣について
- 小・中・高等学校の家庭科被服実習について(第1報) : 教科書を中心に
- こどものきもの(第1報) : 女児服に関する実態調査
- 和服の寸法設定に関する研究(第2報) : 大裁男物長着の着丈・揚下り寸法設定についての考察
- 婦人農作業衣に関する研究(第5報) : 動作時の着ごこちに影響を及ぼす部位の検討
- 婦人農作業衣に関する研究(第3報) : 必要ゆるみ寸法と既製作業衣の機能性との関係について
- 衿肩明についての一考察(第1報) : 体型とくりこし寸法の関係
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第5報) : ブラウスにおけるC.P.の体型別適合度
- 日本人青年女子の肌色の季節変化について : 名古屋地区における測定
- 和服に関する研究(第2報) : 既製和服の丈寸法と体型との関連
- 和服着装に関する研究(第7報)浴衣地と着装の実態調査
- 和服着装に関する研究(第6報) : 現代感覚の浴衣着装と意識
- 和服着装に関する研究(第5報) : レンタルの利用状況と意識
- 和服着装に関する研究(第4報) : ***の袴利用について
- 和服着装に関する研究(第3報) : 卒業時における和服の利用について
- 和服着装に関する研究(第2報) : 年末年始における和服の利用について
- 和服着装に関する研究(第1報) : 浴衣と帯の利用について
- 帯に関する研究(第4報) : 昭和20〜63年の裁縫書における付け帯の種類について
- 和服の寸法設定に関する研究(第1報) : 既製男物浴衣の構成寸法について
- 和服に関する研究(第3報) : 既製和服の構成寸法と体型との関連
- 和服に関する研究(第1報) : 既製和服に対する消費者意識と実態
- 現代における生活と衣服との関連について(第1報) : ***の被服購入状況の調査
- 婦人農作業衣に関する研究(第1報) : 東海地区における農作業衣の実態について
- インドネシア,スラウェシ島における衣生活(第1報) : トラジャ族の伝統的社会構造
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第4報) : スカートにおける体型別適合度
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第3報) : 下半身の体型分類
- Drafted patternとCommercial patternの比較研究(第2報) : 一般婦人によるCommercial patternについて
- Drafted pattern とCommercial Patternの比較研究(第1報) : 学生に対する実態調査
- 運針作業に関する研究(第1報) : 運針が被服構成に及ぼす影響について
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第3報) : 原型比較およびドレメ方式による補正について
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第1報) : 短大家政科の実態調査
- こどものきもの(第2報) :学童服に関する実態調査
- 短期大学における被服構成および実習に関する研究(第4報) : ブラウス縫製時間の考察について
- インドネシア,スラウェシ島における衣生活(第2報) : トラジャ族の伝統的社会構造と葬儀用衣装との関連
- インドネシア,スンバ島における衣生活(第3報) : 日常の衣服着装とその変容について
- インドネシア,スンバ島における衣生活(第2報) : 所有衣服と管理について
- 浜のくらしと祭り(第2報) : 三河湾をめぐる海村地域の祭り7例より
- 浜のくらしと祭り(第1報) : 繰糸祭・お糸船神事より
- 「イタコ」をする離島の女たち
- 衣の系譜に関する研究 : (第4報)腰巻の機能性について
- 衣の系譜に関する研究 : (第3報)腰巻の系譜について
- 婦人農作業衣に関する研究(第4報) : 既製作業衣の袖の機能性についての検討
- 婦人農作業衣に関する研究(第2報) : Kinesiologyから見た作業衣の必要ゆるみ寸法の検討
- 運針作業に関する研究(第2報) : 運針作業における技法分析について
- 帯に関する研究(第6報) : 越原家における名古屋帯の纐纈織について
- 帯に関する研究(第5報) : 昭和20〜63年の裁縫書における付け帯の構成について
- 帯に関する研究(第3報) : 明治〜昭和期の教科書における付け帯について
- 帯に関する研究(第2報) : 大正・昭和における付け帯について