大豆の葉形についての一考察 : とくに発育に伴なう形質の変化について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
作物体の生長発育に伴って変化する形質の1つとして大豆の葉形の主茎節位による変化を考察するために, 長葉で有限伸育性の十勝長葉, 円葉で無限伸育性のHarosoyおよびそれらのF_1,F_2を用いて, 葉長, 葉巾, および葉長/葉巾によって算出された葉形指数の分散, 広義の遺伝力を検討した。1. 葉形に関する事項の中とくに葉巾, 葉形指数の主茎節位による変化について, F_1は十勝長葉よりもHarosoyに近かった。2. F_2では, 葉長はほぼ両者の中間で明らかな分離を示さなかったが, 葉巾, 葉形指数ともにHarosoyの形質, すなわち, 広い巾, 小さい葉形指数が優勢に分離し, Na, na遺伝子によって支配されるものと思われた。さらにこれらの分離は, 両者ともに第3,4,5,6葉の中間節位の葉に明らかで, 基部, 上部の節位の葉では明瞭でなかった。3. 葉長, 葉巾は両親およびF_1の分散が大きく, 遺伝力は50∿60%以下で概して低かった。葉長の遺伝力は主茎節位により変化がなかったが, 葉巾では, 遺伝力は第3,4,5,6葉に高く, 第1,2葉および第7,8葉では低かった。葉形指数はF_2の分散が大きく, 遺伝力は60∿90%の間にあり高かった。とくに第3,4葉に高く, 第4,5,6葉ではこれにつぎ, 第1,2葉, 第8葉では低かった。4. 葉巾および葉形指数の分散および遺伝力の葉による変化は, 葉形を支配するNa, na遺伝子が, 生育初期ではその効果を充分に発現できず, 生育後期では開花後の伸育に関与する遺伝子Dt, dtの作用, および増大する環境要因の影響によって, 同じく遺伝子Na, naの発現が充分でないと考えられる。従って葉形の判定は, 遺伝力の高い時期を選ぶことが望ましく, とくに第1着花節位の葉を基準として最適葉を選ぶべきである。
- 神戸大学の論文
著者
関連論文
- ダイズの無限伸育性の育種学的意義 : 第 11 報 裂莢と茎, さや, 種子の水分含量についての品種間差異(園芸農学)
- ダイズの無限伸育性の育種学的意義 (第10報) : 有限,小粒の北海道および九州産ダイズ品種の結実過程の差異
- ダイズの無限伸育性の育種学的意義 (第9報) : 花芽分化後の増加節数の品種間差異と遺伝性に基づく伸育性程度の判別
- 倒伏抵抗性検定方法についての一考察
- 大豆の葉形についての一考察 : とくに発育に伴なう形質の変化について
- 大豆の無限伸育性の育種学的意義 (第8報) : 野生ツルマメの伸育習性の遺伝について