大豆の無限伸育性の育種学的意義 (第8報) : 野生ツルマメの伸育習性の遺伝について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
野生のツルマメ(Glycine soja SIEB. et ZUCC.)と栽培大豆(G. max (L) MERRILL)との交雑育種に資するために, ツルマメの伸育に関する形質の遺伝について考察した。ツルマメ, 半栽培種(G. gracilis SKVORTZOW)および栽培大豆を短日条件下で栽培した結果, これら種間, 品種, 系統間の伸育性の差が短日条件下でもある程度認められた。よって, 静岡産のツルマメと無限伸育性の黒千石畿内5号の交雑後代を9時間の短日条件下で栽培した。茎長, 主茎節数, 平均節間長はF_1で著しい強勢を示し, F_2では超越分離を示した。茎の直径(基部, 上部)はF_1では両親の中間でF_2でも両親の間に連続変異を示す分離が見られた。遺伝力は, 茎長, 主茎節数, 平均節間長で高く, 茎の太さは低かった。形質間の相関, とくに遺伝相関は, 茎長, 主茎節数, 平均節間長の相互間に高く, 茎の太さの中, 基部のそれとは相関が認められたが, 上部ではかられた直径とは相関が認められなかった。また, 基部, 上部ではかられた基の直径の間には相関が認められた。関与する遺伝子対の数は, 基長, 主基節数, 平均節間長に最少2∿3が推定されたが比較的少ない。茎の直径は基部で3.35,上部で11.30で上記3形質にくらべて多数の遺伝子対が関与していることが推定された。以上の結果から, 野生のツルマメと無限伸育性で比較的ツルマメに近い栽培大豆の間にも, 伸育に関する形質にかなり遺伝的に差が認められるので, これら両種間の交雑による育種に当っては育種方法に注意するほか, 育種目的に合致した遺伝子, 遺伝力をもった品種を母本として用いることが必要であると考えられる。
- 神戸大学の論文
著者
関連論文
- ダイズの無限伸育性の育種学的意義 : 第 11 報 裂莢と茎, さや, 種子の水分含量についての品種間差異(園芸農学)
- ダイズの無限伸育性の育種学的意義 (第10報) : 有限,小粒の北海道および九州産ダイズ品種の結実過程の差異
- ダイズの無限伸育性の育種学的意義 (第9報) : 花芽分化後の増加節数の品種間差異と遺伝性に基づく伸育性程度の判別
- 倒伏抵抗性検定方法についての一考察
- 大豆の葉形についての一考察 : とくに発育に伴なう形質の変化について
- 大豆の無限伸育性の育種学的意義 (第8報) : 野生ツルマメの伸育習性の遺伝について