中国雲南における食用としてのスズメバチ : その市場と調理法について
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概要
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In this paper the present marketing situations of hornet broods as a food material, local specialties and their recipes, and methods for collecting and breeding hornet nests in Yunnan in China are described. The hornet nests marketed in Kunmin are all those belonging to the genus Vespa, -V. mandarinia, V. soror, V. tropica, V. velutina, V. variabilis, V. analis, V. basalis, V. binghami and V. mocsaryana. Newly-emerged imagos soaked in spirits are also sold as Chinese typees of medicine. The hornet broods are sold from the middle of June to the end of October and the top season being from August to September in this area. Each dealer sells about 1,500 to 3,000 kg of hornet nests per year. In Kunmin, the price of hornet nests with broods is 2 to 4 times higher than those of other animal meats (pork, beef, mutton, chicken, etc.). Hornet nests are usually collected by exterminating worker hornets making a counterattack by burning with torches at the entrance of the nests. Recently, attempts were also made to use insecticides or fuses. When a nest too small to use for food is found, the queen and workers are caught alive together with the nest and kept in the garden until the nest grows in autumn. The most popular method for cooking hornet broods is frying in rapeseed oil. Among 25 minority races in Yunnan, Hui Muslims do not eat hornet broods while others favor them greatly as food. For these minority races living in the mountain areas hornet broods in the large nests have been highly important as a nutritious protein source. Though hornet nests have been collected in a self-sufficient amount until recently, they aro now evaluated as a luxury food with the recent advance in the market economy in China. It is therefore presumed that hornet broods are marketed as an expensive seasonal product.本報は中国雲南省における食用としての大型のスズメバチについて,省都昆明市とその周辺の市場での巣の取り引きや販売方法の実態,少数民族を中心としたハチの子(終齢幼虫及び蛹)の料理の種類やその調理法,巣の発見・採集・飼育などの方法を,現地での調査をもとに述べたものである。食用とされるスズメバチはスズメパチ属10種,ホオナガスズメバチ属とクロスズメバチ属の各1種が確認されたが,おそらくこの地方に生息する全種(22種)が利用されているとみなされる。とくに食材としては世界最大種に属するウンナンオオスズメバチ,ネッタイヒメスズメバチ,オオスズメバチの3種の評価が高く,ハチの子が生きたまま巣の中に入った状態で,豚や牛など家畜肉の4~10倍の価格で売られていた。この地方は市場での販売量から推定すると,食用としてのスズメバチの世界最大の消費地とみなされた。ハチの子は,郷土食(地元では風味食品という)として単独または野菜や各種の調味料などとともに油炒めにされたり,民族によってはスープにするなどメニューは多彩で,一般家庭だけでなく,飯店や食堂などでも供されていた。こうしたスズメバチは,すべて野生の巣が利用されているが,とくに雲南省の南部(思芽,楚雄,紅河,文山など)に産地が多く,秋のシーズンに採集されるばかりでなく,6~8月の営巣初期~中期の段階の小さな巣のうちに生け捕りにしたものを,自宅付近で飼育して繁殖カストが生産される秋になって利用する場合が多い。こうした飼育によって食用としての巣の価値が高まるばかりでなく,それらの巣からは新女王バチが離巣して野外における次世代の繁殖に寄与していると見なされた。また,攻撃性や毒性が発達したことには,スズメバチの発祥地とみなされるこの地域において,ヒトによる捕獲が度々行われたことが関係している可能性が示唆された。
- 三重大学の論文
著者
-
松浦 誠
三重大・生物資源
-
高 鷹
三重大学
-
程 士国
三重大学大学院
-
松浦 誠
三重大学生物資源学部
-
程 士国
三重大学生物資源学部
-
程 士国
三重大学生物資源学部生物資源開発科学専攻
-
Matsuura Makoto
生物資源学部
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