日本における蜂刺傷と社会性カリバチの攻撃性について
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概要
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This review deals with analysis of social vespid stings in Japan in relation to aggressive behaviors of social vespid wasps. There were 719 deaths from stings by social wasps and bees in Japan for the 20‐year period, 1979 through 1998, an average of 30 deaths per year. The three most important groups of Hymenoptera insects responsible for fatal stings were Vespa spp., Vespula spp. and Polistes spp.. The ratio of male to female deaths was 4 times. Of 108 sting deaths only 13 (8.4%) were among persons less than 30 years of age ; 81.2% were those 40-60 years of age. Most of these deaths resulted from allergy (anaphylaxis shock), rather than toxic effects of venom. Much of the discussion are centered on the defensive and aggressive behavior of the social wasps against mammalian nest intruders, and information is reviewed on the following aspects : (1) major features of the life history, (2) predators and parasitoides attacking the colony, (3) behavioral defensive mechanisims against colony predators, and (4) factors affecting the degree of defensive and aggressive behavior. The degree of guard, warning, threat and attack exhibited by them is dependent upon a number of conditions, including (1) species differences (2) colony size, (3) state of colony growth, (4) colony history, (5) hornet predation, (6) queenright or orphaned colony, (7) day or night, and (8) geograhical distribution, and all of these conditions are usually interrelated.本総説では,日本におけるハチ刺症について,主に社会性カリバチの攻撃行動との関連において述べた。日本では社会性ハチの刺症による死者は1979~1998年の20年間に719名で,年平均30名となる。致命的なハチ刺症を引き起こすハチの仲間は,スズメバチ属Vespa,クロスズメバチ属Vespula及びアシナガバチ属Polistesの3属が最も重要であった。ハチ刺症による死者の性別は,男性は女性の4倍に達した。刺症による死亡者の年令は,30才以下では全体の8.4%(13/108)に過ぎず,81.2%は40~60才台であった。またハチ刺症による死亡者の大部分はハチ毒の直接的影響でなく,アレルギー性(アナフィラキシーショック)に起因した。社会性カリパチの巣に対する,哺乳動物などの大型侵略者に向けた防衛及び攻撃行動が重点的に述べられ,次の諸点に関して考察した。すなわち,(1)生活史の特性,(2)巣の捕食者と寄生者,(3)巣の捕食者に対する行動的な防衛機構,(4)防衛及び攻撃行動の程度に関わる要因である。また,守衛,警告,威嚇及び攻撃の程度は(1)種間差,(2)営巣規模,(3)巣の発達段階,(4)巣への干渉歴,(5)大型スズメバチによる捕食,(6)女王の有無,(7)昼夜の違い,(8)地理的変異(亜種)などの諸要因が相互に関りあっている。
- 三重大学の論文
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