バングラデシュにおける大豆生産普及の展開過程 : GOとNGOによる連携
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概要
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バングラデシュは,総面積144万km^2の国土(日本の0.4倍)に1億4千万の人口をかかえ,その80%は農村部に居住している.1971年のパキスタンからの独立以降,政情の不安,行政制度の未整備,天然資源の不足,輸出力の低さ,農村の貧困,さらに,度重なる自然災害等の諸問題を抱える中で,食糧自給の達成は,国の最優先課題として取り組まれてきた.就業機会の65%を創出する農業は,稲作を中心に,畑作,園芸,畜産,水産,林業等が密接に絡み合った営農形態をもち,農家の70%は10ha(2.5acre)以下の小規模農家層や土地無し農民で,その割合は増加の傾向にある.しかし国土のほとんどが平坦で,耕地率は66%と極めて高く,農地の拡大は不可能で,貧農層にとっては内延的な充実による営農改善の余地しか残されていないと言える.近年における農業部門の特徴は,これまでの穀物生産優先政策から,各地に適した作目・畜目の多様化と選択的拡大を図ろうとするもので,特に,近年の灌漑事業の進展や改良品種の導入・普及に伴い,作目の多様化を促進してきた栽培システム研究(Cropping Systems Research)の経験を基礎に,園芸,畜産,水産,林産部門を加え,農家の土地・労働・資本の総合的な活用を図ろうとする営農システム研究(Farming Systems Research)への展開は,小農経営の改善にとってその成果が期待されよう.バングラデシュの栄養水準は,他のアジアの国々に比べても低く,特にタンパク質と脂肪の摂取量は最低の水準にあると言われている.FAOの試算では,一日の平均必要熱量を2,120Kcal,蛋白質を61.5gとしているが,カロリーでは人口の44%,蛋白質では78%が水準以下の栄養不良の状態にあると見られ,都市部の30〜40%と農村部の30%の人口が絶対的貧困レベルに置かれていると言われている.農村生活の改善は,栄養改善,衛生改善,家族計画,教育の向上,地域住民の互助組織等が総合的に結びついて効果が発揮されてくるものであるが,まずは,食糧生産の増加によって,食生活における栄養水準が少しずつでも向上する様な段階を維持してゆく事が最優先の課題となっている.本稿においては,近年の農業生産多様化の下で,栄養収量が高く,栽培技術体系の定着が注目されている大豆生産の振興事業に焦点を当て,その沿革や,研究・普及組織,生産と消費の動向,そして,国際協力等の展開について考察する.
- 2003-03-20
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