The Shadow in the Rose Garden における「秘密」について
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概要
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D.H.ロレンスの短編The Shadow in the Rose Garden(ばら園の影)は, ある新婚夫婦の間に介在する妻の秘密をめぐってストーリーが展開する.二人の心理的な力関係における妻の優位を背景に, 秘密は保持されるが, 夫には不安, 憎しみ, 怒りが生じる。やがて思い出の場所である牧師館のばら園で, 狂人に変わり果てたかつての恋人に偶然出会った妻は, 秘密の保持によって設定されていた自他境界域を喪失する.いわばアイデンティティーを失い, 自己解体を生じる結果となる.夫もまた狂気という事実に直面して, 妻との関係を回復する可能性を失う.ストーリーの展開に従って, 秘密の暗示, 保持, 漏洩, 破局のプロセスが, 軽いタッチの文体と巧みな構成とによって効果的に表現されている.特に, 妻の非固有名詞という文体的指標は, 妻の秘密をめぐって起きる夫と妻の様々な心理状態に一般性を与える効果を持つ.さらに終末部における, 狂人となった昔の恋人の出現は, 日常性に潜む狂気が白日のもとに晒される効果を及ぼす.ロレンスは狂気を「影」という表現で暗示する.「影」は私達に内在する狂気の比喩として普通性が付与され, 物語の中で象徴的に機能していると考えられる.
- 川崎医療福祉大学の論文
著者
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