<原著>統合保育場における言語遅滞をもつ精神遅滞幼児の交友関係

概要

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統合保育の目的の一つとして, 障害児と健常児が共に生活していくことのできる人間性を形成することがあげられる.この人間関係の基礎となる交友関係の発達に, 言語が重要な役割を果たすことがこれまでに指摘されている.そこで, 著者らは言語発達程度が異なる2名の精神遅滞幼児を半年間にわたり観察し, 交友関係成立過程に言語遅滞の程度がどのような影響を及ぼすかを検討した.その結果, 言語遅滞が軽度であるA児は, 遊戯行動・対人関係・言語発達のいずれにおいても進歩が認められ, 交友関係の成立もみられた.一方, 言語遅滞がA児に比し重度であるB児は, 遊戯行動・対人関係・言語発達においてA児のような著しい進歩はみられず, 交友関係の発達もみられなかった.このことから, 言語能力が交友関係の発達に重要な役割を果たしていることを再確認した.遊戯行動・対人関係・言語発達は, 互いに関連し合い, 良循環を繰り返しながら発展していく.A児において, この3分野が同時に発達したのは, 言語能力が比較的高いために対人関係が円満になり, 遊戯行動も活発になっていくといったように, 3分野の間に良循環が成立したためであり, B児は言語遅滞が著しいために良循環が成立しなかったと考えられた.しかし, A児の場合, 流涎(よだれ)があるために他の幼児から多くの排斥を受け, これがA児の交友関係を阻害していた.B児は, 他児への無関心・反響言語・こだわり行動などの自閉症児特有の行動を示す精神遅滞児であり, この行動特性がB児の交友関係不成立を助長していた.このように, 精神遅滞児の衛生面での印象や, 自閉といった生来的な行動特性なども精神遅滞児の交友関係の発達を規定する要因の一つといえよう.

<原著>統合保育場における言語遅滞をもつ精神遅滞幼児の交友関係

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