多層系砂柱の浸透破壊問題における押えフィルタの効果と一層(均質)の仮定の合・不合理性

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一次元上昇浸透流による砂柱の破壊に関して, 理論的に考察を行った。ここでは, 一般的な多層系砂柱(n層系(押えフィルタあり))の浸透破壊問題に関して, とくに, 押えフィルタの効果, 及び, 砂柱を一層(均質)と仮定することの合・不合理性について詳しく考察を行い, 次のような結論を得た。(1)押えフィルタの3つの効果(i)限界点の降下ある多層系砂柱の潜在限界点を砂柱の下から上方へ順に点1,点f, ……, 点s, 点t, 点u, ……, 点w(1<f<……<s<t<u<……<w≦n)とすると, これらの潜在限界点で限界となるときのpの値に関する関係式は次のようになる。[numerical formula]ここに, たとえば, p_<tc>は境界点tで限界となるpの値であり, p_<tc min>, 及び, p_<tc max>は, p_<tc>の最小値, 及び, 最大値である。また, 上式の上部に示す( )内の点は, 当該部分のpの値またはpの範囲に対して限界となる境界点を表す。q, hに関しても, この式と類似の(39)式, 及び, (40)式が成り立つ。この式は, 上方の点を限界とするのに必要なpの値よりも, それよりも下方の点を限界とするのに必要なpの値の方が大きいことを意味している。すなわち, ある砂柱に関して限界となる点が砂柱の中間または最上層にあるとき, その砂柱に押えフィルタを載せることにより, pが大きくなるにつれて, 限界点は, そこから下方に移動し最終的に(p≧p_<1c min>で)砂柱の最下端へ達することを意味している。また, この場合, pの増加につれて限界点は次のように上から下方へ順に移動することがわかる : 点w⟶……⟶点u⟶点t⟶点s⟶……⟶点f⟶点1。(ii)限界水頭差の増大一般的にp=p_<tc>のときh=h_<tc>で点tにおいて限界となる場合を考える。この場合, 押えフィルタの有効上載圧がΔp(>0)だけ増加したときの限界水頭差h_<tc>の増分Δh_cは次のようになる。(1)増分Δpに対して限界点が同じ位置(点t)の場合 : [numerical formula](2)増分Δpに対して限界点が降下する場合(ここでは, 一般的に限界点が点tから点sへ降下する場合(1≦s<t≦n)を考える) : [numerical formula]また, Δh_cの値は, (47)式で与えられる。このようにして, (1), (2)から, 次の事柄が言える。増分Δpによる限界点の降下の有無にかかわらず, 押えフィルタの有効上載圧pが増加(Δp>0)すれば, 限界水頭差が増加(Δh_c>0)する。(iii)限界時における砂層の安定性の増大一般的に, p=p_<tc>のときh=h_<tc>で点tにおいて限界となる場合を考える。この場合, 押えフィルタの有効上載圧がΔp (>0)だけ増加したときの境界点mにおける残留鉛直有効垂直応力の増分Δσ′_z(点m)res.は次のようになる。(1)増分Δpに対して限界点が同じ位置(点t)の場合 : Δσ′_z(点m)res.は, (50)式で与えられ, その値は境界点mと限界点tの相対的な位置関係によって次のように分類される。t<m≦nの場合 : Δσ′_z(点m)res. >0(点mが限界点tより上方の場合)m=tの場合 : Δσ′_z(点m)res.=0(点mが限界点tと一致する場合)1≦m<tの場合 : Δσ′_z(点m)res. <0(点mが限界点tより下方の場合)(2)増分Δpに対して限界点が降下する場合(ここでは, 一般的に限界点が点tから点sへ降下する場合(1≦s<t≦n)を考える) : Δσ′_z(点m)res.は, (53), (54)式で与えられ, その値は境界点mと限界となる点t, sの相対的な位置関係によって, 次のように分類される。t≦m≦nの場合 : Δσ′_z(点m)res. >0(点mが点t以上にある場合)s<m<tの場合 : Δσ′_z(点m)res.⪌0(点mが点sと点tの間にある場合)1≦m≦sの場合 : Δσ′_z(点m)res. <0(点mが点s以下にある場合)このようにして, (1), (2)から, (i)の結論を考慮して次の事柄が言える。押えフィルタの有効上載圧pが増加してゆくにつれて, 限界点tより上の砂層中の残留有効応力が増大し, 限界点より上の砂層の安定性が増大してゆく。
神戸大学の論文

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