直接流出量にかかわる山地表層部の機能 : 山地の水調節機構に関する実験的研究 (1)

概要

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山地における降雨の直接流出率を調べた結果, 山地斜面表層部が水調節機構上重要な働きをしていることがわかったが, その働きに関して, 2,3の実験を行なった。ここで明らかになったのは次の諸点である。1) 試験流域における直接流出率は通常2∿5%と低く, 最大値でも13%であった。2) 従来いわれるような初期損失現象はみられず, 小降雨時にも明瞭な直接流出反応が認められた。小出水には流域内常時流水部の影響が強く現われ, その面積率が重要である。3) 山腹斜面表層部の通水性は良く, 通常強度の降雨を吸入するには十分である。4) 飽和山腹土壌の排水試験の結果では, 経過時間100分を境として水分減少率が異なったが, この土壌の場合, 飽和度65%以上の水分はとくに移動速度が早い。5) 固相率は30∿60%とばらつきがあるが, 平均して考えると深さ方向に増大する。6) 粘土分は5%以下と低く, 良好な通水性の要因となっているが, 一方体積率で25%前後の水分量を重力に抗して保持することができ, 試験地斜面は容量の大きな降水貯留槽として機能している。
神戸大学の論文