light anesthesiaの内分泌機能への影響 : balanced anesthesiaとしてのJackson-Rees麻酔管理による口腔外科周術期の下垂体-副腎系内分泌動態について
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概要
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術野が気道に位置する顎顔面口腔外科手術領域の全身麻酔管理では, 迅速な麻酔覚醒を確実にし全身合併症を防ぐ上で, 周術期を通じ呼吸循環・内分泌系などの生理機能を保持しておくことが特に重要である。本研究では, 麻酔毒性が少ないと考えられる, light anesthesiaであるJackson-Rees(J-R)法(笑気・酸素・非脱分極性筋弛緩薬併用麻酔法)に着目し, 同麻酔管理による口腔外科周術期において, 下垂体一副腎系内分泌生理機能がいかに保持され得るかについて評価する目的で, 揮発性吸入麻酔薬による管理と対比させ, β-endorphin(β一EP), ACTH, コルチゾル, カテコラミンの各血漿濃度をその指標として測定し, 比較, 検討した。J-R群(J-R法維持;必要に応じ適宜サイアミラールの間歓静注施行)では, 1-A群(揮発性吸入麻酔薬維持)に比し, 術中から術後!日までも, βEPなどの内分泌学的パラメーターが有意な高値を示し, 下垂体一副腎系内分泌機能が疲弊期に至ることなく外科的侵襲に対応し適度に保持されていることが確認された。さらに, poorrisk群では, J-R法を基本に適宜低濃度エンフルレン併用で, 麻酔を深くせずにCa^^++拮抗薬により血圧動態の安定を図ることで, balanced anesthesiaとして内分泌系生理機能が適度に保持された。以上より, J-R法では, 本周術期を通じ, β-EPなどの分泌保持による広範な生物学的活性に由来する, 本来の生体防衛機構としてhomeostasisの維持に重要な役割を果たしている下垂体一副腎系内分泌動態が良好に保持されていることで, 安全な患者管理上有益な麻酔効果がもたらされると考えられた。それゆえに, 手術患者の術後の自然回復力発現に及ぼす好影響が示唆された。
- 1993-06-30
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