展葉枝ざしによるモモの台木繁殖
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概要
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モモにおける栄養繁殖の可能性を検討するため,生長の初期段階に展葉した2年生の枝を採取し,2か年にわたってさし木実験を行った。1) 1987年は,川上村産野生モモを用い,6種類の床土に発根促進剤としてインドール酪酸(IBA)の0及び1,000ppm処理を組み合わせてさし木を行った。その結果,ピートモス+鹿沼土区のIBA1,000ppm処理(A樹)の活着率が100%で最も高く,赤土区のIBA1,000ppm処理が85%でこれについだ。反対に最も劣ったのは川砂区で,IBA処理に関係なく,わずかに10%であった。しかし,発根数及び生育量は川砂区のIBA1,000ppm処理が最も優れ,ピートモス+鹿沼土のIBA1,000ppm処理(A樹)がこれにつぎ,ピートモス単用区は著しく劣った。2) 1988年は,4種類の床土にIBAの0,1,000及び2,000ppm処理を組み合わせて実験を行った。結果は前年とほぼ同様で,活着率はピートモス+鹿沼土区のIBA1,000ppm処理が最高で,川砂区は著しく低かった。1988年はさらに川上村産のほかに大鹿村産の野生モモと栽培種の ‘千曲白鳳' を用い,さし穂の展葉数及びIBAの処理濃度についても検討した。その結果,活着率が最も高かったのは,展葉数2~3枚の川上村産野生モモにIBAの1,000及び2,000ppm処理を行った場合と展葉数4~5枚の大鹿村産野生モモにIBAの0及び1,000ppm処理を行った場合で,いずれも100%の活着率を示した。しかし ‘千曲白鳳' の展葉数2~3枚区は,IBAの1,000及び2,000ppm処理のいずれも活着率が60%で,比較的低い値を示した。生長量は大鹿村産野生モモの展葉数4~5枚区のIBA1,000ppm処理が著しく優れ,反対に展葉数が0~1枚区の川上村産野生モモで,IBAが0及び1,000ppm処理の場合に著しく劣った。3) IBAの比較的高濃度処理では,発根率,最大根長ともに2,000ppm処理が最大を示し,処理濃度の増加とともに減少する傾向がみられた。しかし,発根数は0ppm処理で極端に少なく,IBA濃度の増加とともに増大した。なお,川上村産野生モモのさし木当年の台木に,‘松森早生'を芽つぎしたところ,翌年には極めて良好な生育を示した。
- 信州大学の論文
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