温州ミカンの花芽の分化,発達と着果調節に関する研究(農学科)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1.温度および施肥が温州ミカンの花芽分化におよぼす影響については, 1965年から1967年にかけて九州大学生物環境調節センターのファイトトロンガラス室を使用し, 実験を行なった。栄養的な見地から, 花芽分化に必要な貯蔵養分が十分に蓄積されるだけの好適な環境状態は, Nが制御されることを前提とする場合, 昼温25℃内外, 夜温20℃内外から始まり, 温度によるN吸収がかなり抑制される15℃∿13℃までの範囲と考えられた。栄養的な手法でもって翌年次の花芽分化の促進を考える場合は昼温25℃, 夜温20℃に達する前後から施肥や灌水などに十分配慮せねばならない。季節的には本邦の8月後半から9月にかけての時期に相当している。2.気象条件が温州ミカンの花芽分化におよぼす影響については1967年から1968年にかけて調査を行なった結果, 収穫後の天候条件もさることながら, 照射エネルギーの総量が多く, 代謝活動が盛んで同化養分が蓄積の方向へ進み始める8月下旬から10月中旬にかけて, 晴天乾燥の集中した年は結実の多少にかかわらず, 翌年次の花芽は著しく増加し, 前年次の結果枝までにも着花をみとめ, 逆の場合は, 未着果枝の着花率も著しく低下している。このことは花芽の操作を人為的に行なう場合は8月∿10月にかけての天候状態にも十分配慮せねばならないことを示唆するものである。3.施肥による温州ミカンの花芽調節については, 1968年, 1969年にりん安, 第1りん酸カリ, 過石および過石+塩化加里などの花芽分化促進に対する効果について検討を行なったが9月下旬以後のいずれの処理も花芽分化を15∿20%以上も促進することが明らかとなった。特に過石+塩化加里区, 11月りん安区の効果が高かった。生理的な効果としては, N吸収をおさえる点が考察され, 生態的な効果は葉が厚くなり, 葉の水平面からの傾斜角度が急になり, 葉の彎曲程度も強くなり, 受光体勢や個々の葉の同化能力の向上が予測され炭素率の絶対量の増加が花芽分化にプラスに作用するものと考えられた。4.化学物質やホルモンによる花芽分化の促進は1970年11月より71年4月にかけて行なったが, エスレル50∿100ppm, アセチレン(カーバイド12g)処理, NAA500∿1000ppmでかなりの効果が確認された。10日おきの2回処理にいたっては更に強く花芽の分化を促進し, 着花率でみると無処理が6.49%, エスレル処理(50∿100ppm), 48.94∿121.00%, アセチレン(カーバイド12g)処理が20.96∿33.04%, NAA処理区(500∿1000ppm) 72.22∿139.05%とかなり高い着花率を示した。いずれも多Nの条件の下で成立するもので, 低Nの場合は葉色の退化(黄化)現象がおこり, 落葉する場合が認められた。非栄養的な手法でもって温州ミカンの花芽分化を促進する場合の化学物質の探索は, Nの制御かN代謝に対し何らかの作用(制限または急速な代謝の促進)をおよぼすものが, 葉内においてエチレンを発生させる物質がその対象となり得ることが予想された。5.温州ミカンの着果量と花芽分化との関係について1967年から1969年にわたって生理生態的な検討を行なったが, 従来の葉果比の研究は生理生態的な効率に対する配慮が十分でなかったことが指摘された。果実着生位置による施肥の効率や受光体勢, 個々の葉の同化能力など生理生態的な効率が十分に配慮され, 葉面散布などの人為的操作が加えられると, 葉面積が24∿25(cm)^2とかなり小型のものでも8∿10枚程度で100gの果実生産が連年可能であることが明らかとなった。また, それらの生理, 生態的な効率は台木やせん定, 整枝, 施肥, 葉面散布など技術的な操作によって, かなり改良されることを明示した。また隔年結果性の樹は, 連年結果の樹に比較して受光に対して生態的な効率が劣ることも明らかとなった。6.温州ミカンの花芽分化過程におけるジベレリンの影響について, 1967年10月10日から翌4月19日にかけて10日間隔で各2本ずつGA100ppm処理を行なった。その結果ジベレリンは生理的分化期と思われる間のものについては, 全く抑制的に作用し, 形態的分化期に入ったものに対しては, それ程影響しないことが明らかとなった。温州ミカンの生理的分化は年内が中心となり, 1月に入って形態的分化が始まり, 2月から3月にかけては, 形態的分化が主で生理的分化が従であることがうかがわれた。着花過多が予想される年に, ジベレリンによる発らい前の花芽のコントロールを考える場合, 形態的分化が主で, 生理的分化が従で交さする時期(2月下旬∿3月上旬)が一つの目安になることが考察された。7.ジベレリン処理による温州ミカンの着花調節は1966年から1967年にかけて行なった。ジベレリンに発らい前の花芽のコントロールは, 直花過多を予想される場合の摘花と予備枝の確保が平行し得ることが確認された。生理的分化期の場合は6ppm程度の低濃度でも花芽分化を抑制することが明らかとなったが, 実際問題として
- 1972-12-01
著者
関連論文
- 温州ミカンの花芽の分化,発達と着果調節に関する研究(農学科)
- 97 伸長抑制(ウニコナゾールP)が春植えサトウキビNiF4の登熟に及ぼす影響
- 野生イネ由来の雄性不稔性細胞質の分類
- イネ台中65号の核置換系統RT98Cにおける雄性不稔および稔性回復の遺伝
- ホルムアルデヒドの放散を抑制する機能性プラスターの試作とその効果
- 有用微生物資材によるホルムアルデヒドの放散抑制効果(2002年度大会 (北陸) 学術講演梗概集)
- 広域下水処理場におけるEM技術導入に関する研究 (日本環境共生学会2000年度学術大会発表論文集)
- 有用微生物群(EM)による自然システムの修復と保全 (日本環境共生学会2000年度学術大会発表論文集)
- EM技術によるダイオキシン類の分解とバイオレメディエーションに関する研究 (日本環境共生学会2000年度学術大会発表論文集)
- P-4 有用微生物利用農業(EM農法)の生命倫理・世界観とその多目的利用(第34回日本心身医学会九州地方会演題抄録)
- 有用微生物発酵物質溶液中の防錆効果による金属の重量変化
- 有用微生物発酵物質溶液中の防錆効果による金属の重量変化
- 有用微生物発酵物質溶液中の防錆効果による金属の重量変化
- 環境と健康を守る発想の転換
- パミスサンド栽培における培養液濃度およびわい化剤がパハヤの生育に及ぼす影響(農学部附属農場)
- 沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究 : 第 9 報 早生温州の着果安定に対する 2,4-D の効果について(農学科)
- 植物生長調整物質による柑橘類の無核果形成に関する研究 : 第 I 報柑橘類の種子発達に及ぼすルチンの影響について(農学科)
- 沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究 : 第 VIII 報葉面散布による早生温州の品質改善について(農学科)
- 園芸作物の葉面散布に関する研究 : 第 1 報リン酸-カリウムおよび糖がネツトメロンの品質におよぼす影響について(農学科)
- 沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究 : 第 VII 報セミノール (Seminole) について(農学科)
- 第 VI 報 GA 処理による早生温州の隔年結果防止について(沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究)(農学科)
- 第 I 報 立地条件について(沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究)(農学部)
- C-024(31) EM-X における肝保護作用
- P-8 実験動物の血〓症におけるEM-Xの影響
- 第 V 報 NAA 処理による早生温州の着花(果)調節について(沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究)(農学科)
- 沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究 : 第 IV 報タンカン Citrus tankan HAYATA について(農学科)
- 沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究 : 第 III 報 早生温州 C. unshiu ver. praeox TANAKA の着花(果)特性について(農学科)
- 第 II 報 早生温州 C. unshiu var. praeox TANAKA について(沖縄地域における柑橘類の生態に関する研究)(農学部)
- クリーニングと衣料に対するEM技術の応用
- EMの香粧品原料としての応用 (特集/香粧品分野における微生物の利用と制御)
- P-27 ラット腎細胞における EM-X の抗酸化力に関する実験
- 特別講演2:環境と健康を守る発想の転換 (第44回日本農村医学会総会特集)
- ミョウガの花粉発芽および花柱内花粉管伸長に及ぼす温度および相対湿度の影響
- 環境と健康を守る発想の転換