南極昭和基地周辺地域のヘリトリゴケ地衣類の分類学的研究(英文)
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概要
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第27次観測隊に参加した筆者によって採集された標本を中心に基準標本等と比較検討した結果, 広義のヘリトリゴケ属地衣類の1新種, 1新組み合わせ種を含む3属5種を認めた。すべて, 昭和基地周辺地域では新産種である。各々について形態・地衣成分・地理分布を記載し, 近縁種との関係を論じた。(1) Carbonea capsulataは亜南極地域に分布する近縁のC. vorticosaと, 子器殻excipulumの菌糸の太さ及び地衣成分の異同で区別できる。本種は大陸性南極の数ヵ所で知られている。本地域では大陸周縁の露岩域に普通にみられる。(2) Lecidea andersoniiは, 北半球に広く分布し南極地域でも数ヵ所から報告されているLecidea auriculataに酷似するが, これとは子嚢下層hypotheciumの着色の有無や胞子サイズで区別できる。本種はウイルクスランドから新種として記載されて以来, 他地域からは報告されていないが, 昭和基地周辺地域では比較的普通にみられる。(3) Lecidea cancriformisは光沢のある褐色の地衣体を有する点で他の種と容易に区別がつく。北半球に広く分布し, 亜南極の数ヵ所にもその生育が知られている近縁のLecidea atrobrunneaとは地衣成分の違い, 地衣体髄層のヨード反応で区別できる。本種は大陸性南極に広く分布し, 昭和基地周辺地域でも普通にみられる。(4) Lecidea soyaensisは子嚢下層下部の髄層がクモの巣状の菌糸で構成され, よく発達した子器殻を有する点, また本種と近縁なLecidea auriculata群にみられない地衣成分スチクチン酸を産する点で新種として区別された。宗谷海岸ラングホブデ産。(5) Lecidella sipleiは側糸と子器殻を構成する菌糸の形状, 及び子嚢頂部の構造からLecidella属のもとに置くのが妥当と考えられる。北半球に広く分布し, 亜南極からもその生育が報告されているLecidella bullataに最も近縁と思われるが, これとは地衣体の形状, 地衣成分の異同で区別できる。本種は大陸性南極のマリーバードランドとビクトリアランドの2ヵ所から報告されているにすぎないが, 昭和基地周辺地域では普通にみられる。
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