<原著論文>「競技不安対応策」の因子構造に関する研究
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概要
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本研究は,競技場面で生ずる,不安や緊張を低減するための競技選手の対応策に焦点を当て,その対応策の潜在的因子構造を分析検討することを目的としてなされた。不安や緊張を低減する対応策に関する調査項目は最終的に49項目が精選された。この49項目から構成される調査用紙によって,172名の大学運動選手に回答を求めた。回答に不備のあるデーター等を削除し,最終的に151名のデーターが因子的構造を検討するため探索的因子分析(主因子,バリマックス法)にかけられ,競技不安や緊張を低減する対応策の因子構造は因子負荷量0.40以上の項目内容により解釈された。第1因子は,「試合ですることを頭の中で思い描く」,「自分の得意のプレーなどをイメージに描く」,などの4項目から構成されることとなった。この様な項目から第1因子は「競技に関するイメージ作り」を反映した因子と考えられる。第2因子は「自分はやれるのだと暗示をかける」,「目を閉じて精神を集中させる」,など7項目から構成されることとなり第2因子は「精神の集中」に関する因子と解釈できる。第3因子は,「身体をほぐす」,「緊張した筋肉リラックスさせる」,などの4項目が抽出された。このような項目より,「身体的リラックス」の因子と解釈できる。第4因子は,「あきらめてしまう」,「早く終わらせようとする」など4項目から構成されている。このような項目より,この因子は不安や緊張からの回避を示す内容である。したがってこの因子は「回避」の因子と考えられる。次に第5因子であるが,この因子に含まれる具体的項目は「気軽に考える」,「気軽に試合をしようと思い込む」などの3項目から構成されることとなった。このような項目の内容から,第5因子は,精神的リラクゼイションを反映する因子であり「精神的リラックス」因子と解釈できる。次に第6因子を構成する項目は「絶対負けないぞと気合を入れる」,「気合を入れ気を引き締める」などの4項目である。これらの項目に共通する内容は心理的に覚醒化し高揚しようとする対応策である。したがって第6因子は「活性化」因子と命名できる。第7因子は「他の人と話をする」,「友人と話をする」の2項目から構成されている。不安や緊張に対して直接関係しない無関係な行動をとることを反映している因子と考えられる。したがって,この因子は「転換行動」の因子と推察される。競技不安対応策因子別の評定値の平均を高い順にみてみると,「身体的リラックス」の因子が7因子の中では最も高い評定値を示し,つづいて「競技のイメージ作り」の因子も高い評定値を示した。「身体的リラックス」因子および「競技のイメージ作り」因子は,自分のパフォーマンスレベルを上昇させ自信をつけ不安や緊張を低減しようとする積極的な対応行動と考えられる。つぎに「活性化」の因子が3.13と高い評定値を示しした。また,「精神の集中」の因子も評定値2.79と高い得点を示した。これらの因子は,不安や緊張状態に押しつぶされないように積極的な思考をして不安や緊張を低減しようとする対応策である。「活性化」因子や「精神の集中」因子でみられる対応策は認知的な手法を用いた積極的な対応策と考えられる。また,「精神的リラックス」因子や「転換行動」の因子は自分のパフォーマンスを向上させようとする対応策ではないが,自分の状態を普段のレベルに戻そうとする積極的な対応因子と推察される。積極的な対応行動とは逆に「回避」因子のような消極的な対応策を示す因子も抽出されたが評定値が1.68と低い値を示した。
- 上智大学の論文
- 2003-03-31
著者
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