<原著論文>「あがり」の原因帰属に関する研究
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概要
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本研究は,運動場面で生ずる,いわゆる「あがり」の現象に焦点を当て,その原因の因子的構造を分析検討することを目的としてなされた。75名の運動選手から自由記述方式により「あがり」の原因を収集した。収集された項目についてKJ法を参考に類似するカテゴリーに分類し,最終的に「あがり」の原因に関する56項目が精選された。この56項目から構成される調査用紙によって,新たに110名(平均年齢21.1歳)の大学運動選手に回答を求めた。因子的構造を検討するため,110名の回答は因子分析(主因子,バリマックス法)にかけられた。その結果,つぎのことが明らかとなった。1.本研究者らによって,競技種目は相手と直接やり取りがある個人型種目,相手と直接やり取りがなく単独で競技をする単独型種目(例えは陸上競技など),集団で競技する集団型種目に操作的に分類された。その結果,調査対象者の競技種目は個人型19名,単独型35名,集団型56名となり,本研究の調査対象者の種目特性は集団型がやや多い結果となった。2.調査対象者の大会出場レベルは全国大会出場者が57名と最も多いうえに,国際大会出場者も若干ではあるが含まれており,競技レベルは比較的高い水準にあることがうかがえる。3.固有値1.0および急落法による因子の抽出の結果,最も解釈しやすい因子数ば6因子であった。そして,6因子による累積寄与率は62.1%を示し,非常に高い寄与率となった。この様 な結果より,「あがり」の原因は6因子構造で解釈が可能であることが椎察された。4.6因子は,因子負荷量0.40以上の項目内容により解釈された。その結果,第1因子は,「失敗するのが怖い」,「失敗するのではと不安に思った」等5項目から構成され「失敗不安」の因子と解釈された。第2因子は,「たくさんの視線を意識した」,「人前でプレーすることを意識した」等5項目からなり「他者への意識」に関する因子であった。第3因子は,「練習が足りなかった」,「試合に対する対策が不足していた」等6項目であった。これらの項目より,この因子は「準備不足」の因子と考えられた。つぎに,第4因子は,「自分の性格が弱いこと」,「精神面の弱さがあったこと」等5項目が抽出され,「性格の弱さ」を示す因子であった。第5因子は,「勝たなければと言う気持ちが強かったこと」,「責任を感じたこと」等5項目が高い負荷量を示し,「責任感」の因子と解釈された。最後に第6因子は,「雰囲気がいつもと違ったこと],「日頃経験しない状況であったこと」等3項目であった。この因子に含まれる項目が少ないことが懸念されたが,「状況の新奇性」に関する因子と考えられた。5.6因子別の平均項目得点を算出し,因子の比較を行った。その結果,得点の高い因子順に,「責任感」,「失敗不安」,「状況の新奇性」,「性格」,「準備不足」,そして「他者への意識」の順番となった。この様な結果より,「あがり」の原因は「責任感」,「失敗不安」,「状況の新奇性」という因子を中核として6因子で構成されていることが明らかとなった。
- 2002-03-31
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