情報システムの社会学
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概要
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従来の情報システム論においては、情報システム自体およびその開発過程の合理性が議論の基本的前提とされてきた。しかし情報システムをめぐって生ずる諸現象は、この想定のもとでは説明しきれない。プロジェクト管理論も問題を仕様ミスやコミュニケーションミスとして処理しがちである。情報システムはコンピュータ技術を契機としつつも、特定の制度的状況において人々の思惑の交錯の中に構築されるものであることに注意しなければならない。ここで要請されるのが情報システム論への社会学的アプローチの導入である。欧米では1980年代から研究が進んでおり、① システム開発を関係者間の資源争奪および取引の応酬として分析する「政治過程アプローチ」、②情報システムを背後の社会組織との関係において捉える「社会組織アプローチ」、③情報システムをめぐる組織変動を技術-ユーザー間の予測不能な相互作用の結果として記述する「創発パースペクティブ」が識別される。情報システムの社会学は必ずしも実務に直結しない。しかし、コンピュータ技術の社会的浸透、社会制度の情報システムへの依存が深まる今日、規範論をいったん切り離し、何事をも社会的構成物として観察・分析の対象にすることには大きな意味がある。今後は情報システムをめぐる社会過程に着目するとともに、システム開発経験とその社会的結果に多角的な分析をほどこし、体系化と知的蓄積を図ることが必要である。
- 愛知教育大学の論文
- 1995-02-10
著者
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