<原著>カルシトニン全身投与が上顎急速側方拡大後の後戻りに及ぼす影響
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概要
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この研究は,カルシトニンの全身投与がラット上顎骨急速側方拡大後の後戻りに及ぼす影響として,保定中の変化を調べると同時に,後戻りの有無と程度について検索を試みた.実験には,12週齢Wister系雄性ラット,75匹を用いた.拡大方法は,矯正用0.6mm線で作製したループ装置を用いた.拡大力は200g,拡大期間は4日間とし,引き続いて14日間保定を行った後装置を撤去することにより後戻り開始とした.後戻り期間は2, 4, 8, 16日とし,各5匹を,1群とした.また距離計測と体重計測には投与群と非投与群各10匹を用い,拡大距離と後戻りした距離を経時的に計測した.投与群にはエルカトニン(非活性100U/ml,pH5.0〜6.5,旭化成)を,非投与群にはエルカトニン用バファー液(0.01%BSA添加酢酸緩衝液,pH5.0〜6.5,旭化成)を後戻り開始1日前から2日毎に10U/kg,頸部に皮下投与した.計測項目として,体重,上顎左右第二臼歯近心頬側面間距離,また血清生化学検査として,血清中のCa濃度,総酸性ホスファターゼ活性およびオステオカルシン濃度を計測した.ラットは各実験期間終了後,上顎部を一塊として摘出し,通法に従い固定,脱灰,パラフィン包埋を行い,H.E染色,TRAP染色を施し光学顕微鏡にて観察した.体重計測で投与群と非投与群を比較した結果,両群の間には大差は認められずエルカトニン投与による全身的影響は認められなかった.距離計測により算出した後戻り量では,全ての実験期間において投与郡の方が低値を示した.血清生化学検査での総酸性ホスファターゼ活性値は骨吸収のオステオカルシン濃度は骨形成のマーカーとした。検査結果から,投与群では総酸性ホスファターゼ活性値とオステオカルシン濃度の両方が非投与群より低値を示していることから,骨吸収,骨形成の両方が低下している可能性が高いことが推測された.しかし,血中のCa濃度は投与群と非投与群に差は認められなかった.組織学的観察では,H.E染色において,成中口蓋縫合部のリモデリングは,投与群の方が非投与群よりも2日位早く進行していた.TRAP染色においては,投与群と非投与群に顕著な差異は認められなかった.以上のことから,カルシトニンの全身投与はラットの実験的上顎骨側方拡大後の後戻りを減少させる効果のあることが示唆された.
- 朝日大学の論文
- 2001-06-20
著者
-
荒木 元英
朝日大学歯学部歯科矯正学講座
-
丹羽 金一郎
朝日大学歯学部歯科矯正学講座
-
丹羽 金一郎
朝日大学名誉教授
-
片上 勝秋
朝日大学歯学部歯科矯正学講座
-
丹羽 金一郎
朝日大学歯学部口腔構造機能発育学講座歯科矯正学分野
-
荒木 元英
朝日大学歯学部 歯科矯正学講座
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