耳鳴に対する蘇子降気湯の治療経験
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
数年来の耳鳴に対して蘇子降気湯を投与した症例を経験したので,著効を得た2症例の症例呈示と合わせて報告する。症例1は70歳女性。主訴はめまい,耳鳴,不眠である。5歳時の両耳中耳炎手術後より耳鳴があったが,3カ月前より回転性めまいが出現,以後耳鳴が強くなり来所した。頭重感,不眠,足先が冷えやすい等の症状があり,蘇子降気湯加紫蘇葉を処方したところ,服用1カ月でめまいは改善し,3カ月後には不眠や耳鳴も改善し,8カ月後には普通の生活ができるようになった。症例2は58歳男性。難聴,耳鳴を主訴に来所した。5年前より回転性めまいと右の聴力低下が出現,進行して聴力を喪失し,さらに1年前より左の聴力低下も出現した。近医にてビタミン剤や漢方薬を処方されたが聴力過敏・耳鳴が出現した。イライラ,不眠,手足が冷える等の症状も認めた。八味丸料加味を投与したが食欲不振となり服用できず,気の上衝を目標に蘇子降気湯加紫蘇葉附子に変方したところ,服用1カ月で自覚症状が改善し,騒音も気にならなくなった。その後の服用継続にて不眠・足冷も改善した。当研究所漢方外来において耳鳴に対する蘇子降気湯の投与を行った13例中,評価可能な10例のうち5例に本方は有効であった。有効例のうち4例は,のぼせまたは足冷を伴っていた。蘇子降気湯は『療治経験筆記』において「第一に喘急,第二に耳鳴」との記載がある。数年経過した難治性の耳鳴にも本方が有用であることが示唆された。
- 2009-03-20
著者
-
及川 哲郎
北里大学東洋医学総合研究所
-
鈴木 邦彦
北里大学東洋医学総合研究所
-
花輪 壽彦
北里大学東洋医学総合研究所
-
及川 哲郎
北里研究所東洋医学総合研究所臨床研究部
-
卯木 希代子
北里大学東洋医学総合研究所
-
早崎 知幸
北里大学東洋医学総合研究所
関連論文
- 臨床報告 麗沢通気湯により神経性嗅覚障害が改善した1症例
- 当帰芍薬散料が有効であった男性の4症例
- 難治性の顔面の皮疹に葛根紅花湯が著効した3症例
- 機能性月経困難症における漢方治療の有用性の検討
- 桂枝去桂加茯苓白朮湯が有効であった4例
- Suppression of murine colitis by Kampo medicines, with special reference to the efficacy of saireito
- めまいに対して沢瀉湯が奏効した3症例
- 耳鳴に対する蘇子降気湯の治療経験
- 慢性頭痛と呉茱萸湯・五苓散 (特集 頭痛と漢方)
- 円形脱毛症に十全大補湯が著効した3症例