新規下痢型過敏性腸症候群治療薬ラモセトロン塩酸塩(イリボー^【○!R】錠)の薬理学的特徴および臨床試験成績
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
イリボー®錠(ラモセトロン塩酸塩)は,男性における下痢型過敏性腸症候群(IBS)治療薬として2008年に上市された,強力かつ選択的なセロトニン5-HT3受容体拮抗薬である.ラットを用いた薬理試験において,ラモセトロンは恐怖条件付けストレス(CFS)およびコルチコトロピン放出因子(CRF)により惹起される排便亢進を用量依存的に抑制し,その効力は他の5-HT3受容体拮抗薬や既存のIBS治療薬よりも強力であった.また,これらの排便異常を抑制する用量とほぼ同じ用量範囲で,ラモセトロンはCFSによる大腸輸送能亢進およびCRFによる大腸水分輸送異常に対しても有意な改善効果を示したことから,その排便異常抑制作用には,ストレスによる大腸輸送能および水分輸送の異常に対する改善作用が寄与していると考えられた.さらに,ラモセトロンは拘束ストレスによる下痢および大腸痛覚閾値低下をほぼ同じ用量範囲で有意に抑制したことから,ストレスによる排便異常および大腸痛覚過敏のいずれにも有効であることが明らかとなった.一方,臨床においては,RomeII基準に合致した下痢型IBS患者を対象に,第II相および第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照比較試験を実施した.その結果,ラモセトロン5μgの1日1回12週間投与は,全般症状,腹痛・腹部不快感および便通異常のいずれに対しても優れた改善効果を示し,プラセボに対する優越性が確認された.また,同じく下痢型IBS患者を対象に実施した長期投与試験の結果から,ラモセトロンの治療効果が長期間持続するとともに,効果や副作用の発現に応じて用量を適宜増減することで,より高い有効性と安全性が得られることが明らかとなった.以上,非臨床薬理試験および臨床試験の結果から,ラモセトロンは下痢型IBS患者において便通異常と腹痛をともに抑制し,その症状の寛解に極めて有効な薬剤であると考えられる.
- 2009-05-01
著者
-
笹又 理央
アステラス製薬株式会社開発薬理研究所
-
宮田 桂司
アステラス製薬株式会社開発薬理研究所
-
笹又 理央
アステラス製薬(株)研究本部開発薬理研究所
-
笹又 理央
山之内製薬創薬研究本部薬理研究所
-
平田 拓也
アステラス製薬株式会社研究本部 開発薬理研究所
-
舩津 敏之
アステラス製薬株式会社研究本部 開発薬理研究所
-
毛戸 祥博
アステラス製薬株式会社研究本部 開発薬理研究所
-
阿久沢 忍
アステラス製薬株式会社研究本部 開発薬理研究所
-
秋保 啓
アステラス製薬株式会社開発本部 臨床開発第三部
-
西田 明登
アステラス製薬株式会社開発本部 プロジェクト統括部
-
宮田 桂司
アステラス製薬(株)研究本部開発薬理研究所
-
Miyata Keiji
Inflammation Research Pharmacology Research Laboratories Institute For Drug Discovery Research Yaman
-
宮田 桂司
アステラス製薬(株) 研究本部開発薬理研究所
-
笹又 理央
アステラス製薬(株) 研究本部開発薬理研究所
-
平田 拓也
アステラス製薬(株)研究本部開発薬理研究所
-
宮田 桂司
アステラス製薬研究本部開発薬理研究所
-
Nishida Akito
Neuroscience/gastrointestinal Research Laboratories Institute For Drug Discovery Research Yamanouchi
-
阿久沢 忍
アステラス製薬(株)研究本部開発薬理研究所
-
舩津 敏之
アステラス製薬(株)研究本部開発薬理研究所
-
船津 敏之
山之内製薬(株) 創薬研究本部 薬理研究所 応用薬理研究室
-
毛戸 祥博
アステラス製薬(株)研究本部開発薬理研究所
関連論文
- 新規骨粗鬆症治療薬ミノドロン酸水和物(リカルボン^【○!R】錠1mg/ボノテオ^【○!R】錠1mg)の薬理学的特性および臨床効果
- 過敏性腸症候群に対する5-HT_3受容体拮抗薬ラモセトロンの効果 : 各種IBSモデルにおける薬効比較
- 新規下痢型過敏性腸症候群治療薬ラモセトロン塩酸塩(イリボー^【○!R】錠)の薬理学的特徴および臨床試験成績
- OP-188 Demonstration of bladder receptor binding selectivity after oral administration of solifenacin by using muscarinic M_2 knockout mice
- APP-060 膀胱虚血再灌流誘発頻尿モデルの確立および本モデルにおけるタムスロシン塩酸塩の作用(排尿障害/基礎,総会賞応募ポスター,第96回日本泌尿器科学会総会)
- 新規シクロオキシゲナーゼ-2選択的阻害薬セレコキシブ(セレコックス^【○!R】錠)の薬理学的特性および臨床試験成績
- YM454を用いた超低音圧ハーモニック-家兎肝多血性腫瘍での検討
- 膀胱選択的ムスカリン受容体拮抗薬コハク酸ソリフェナシン(ベシケア^【○!R】錠)の過活動膀胱に対する改善作用 : 特に尿意切迫感に対する作用
- ラットにおけるMidazolam 皮下持続投与時の鎮静作用
- 新規C型慢性肝炎治療薬インターフェロンアルファコン-1(アドバフェロン【○!R】)の薬理作用と臨床効果
- がん治療ターゲットとしてのサバイビンの可能性とサバイビン発現抑制薬YM155の非臨床研究
- Effect of Incadronate on Corticosteroid-induced Osteopenia in Rats
- 過敏性腸症候群治療薬の創薬研究
- 超音波造影剤YM454を用いたHarmonic Imagingによる家兎肝VX-2腫瘍での造影効果-血管造影 ・ 病理組織所見との比較検討-
- 超音波造影剤YM454を用いた肝での B-mode 造影効果の解析 : 音圧と造影効果の関連について
- New 1,4-Benzodiazepin-2-one Derivatives as Gastrin/Cholecystokinin-B Antagonists
- ガストリン/CCK-B受容体拮抗薬の抗潰瘍薬としての有用性について
- 新しい抗潰瘍剤 : ガストリン受容体拮抗剤
- Venture 5-HT3受容体拮抗薬の過敏性腸症候群治療薬としての有用性--塩酸ラモセトロンの薬理学的特徴
- 世界に誇れる日本の創薬と将来
- 新規過活動膀胱治療薬コハク酸ソリフェナシン(ベシケア^【○!R】錠)の薬理学的特性および臨床試験成績
- 麻酔雄性イヌにおける塩酸タムスロシンの尿道内圧上昇抑制作用と血漿中および下部尿路組織内濃度との関連性
- YM-26818 : 1-(2-Dimethylaminoethyl)-1-(3,4,5-trimethoxyphenyl)urea, 及び誘導体の肺サーファクタント(PS)分泌作用と肺コンプライアンス改善作用
- ラットの胃排出能に対する胃酸の影響
- 神経細胞保護薬の新評価方法
- 生活習慣病治療薬の現状と開発動向 : 高脂血症治療薬(生活習慣病)
- Venture HMG-CoA還元酵素阻害薬の進化--新世代スタチン:アトルバスタチンの薬理学的特徴
- HMG-CoA還元酵素阻害薬アトルバスタチン(リピトール^)の薬理作用と臨床効果
- 抗潰瘍薬と抗ピロリ薬の研究開発経緯
- 進化した胃薬 : ガスター(20世紀を代表する創薬)(21世紀:薬学の時代へ)
- がん治療ターゲットとしてのサバイビンの可能性とサバイビン発現抑制薬YM155の非臨床研究
- 泌尿器領域における創薬 : 塩酸タムスロシンおよび塩酸ソリフェナシン
- Industrial Info. 過敏性腸症候群(IBS)治療薬 : ラモセトロン塩酸塩(イリボー)
- 過敏性腸症候群治療薬イリボー^【○!R】(ラモセトロン塩酸塩)の創製
- 新規過活動膀胱治療薬ミラベグロン(ベタニス^【○!R】錠)の薬理学的特性および臨床試験成績