透析施行中の腎性貧血に対する持続型赤血球造血刺激因子製剤(ダルベポエチン アルファ : ネスプ^【○!R】)の薬理作用ならびに臨床試験成績
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概要
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貧血とは,酸素運搬能を有するヘモグロビン(Hb)の血中濃度の低下で定義される.成体において,造血ホルモンであるエリスロポエチン(EPO)の産生部位は腎であるため,腎機能が廃絶している慢性透析患者において,貧血は頻発する重大な合併症となる.遺伝子組換えヒトEPO(rHuEPO)製剤は,1990年の発売以来,その優れた造血効果と安全性で,腎性貧血治療において多大なる貢献をし続けてきたものの,貧血改善効果を持続するには,週3回の透析ごとの投与が基本となる.ネスプ®(一般名:ダルベポエチン アルファ)は,遺伝子工学および糖鎖工学の手法により,rHuEPO分子に新たにアスパラギン結合型(N-結合型)糖鎖を2本付加した持続型赤血球造血刺激因子製剤である.ネスプのヒトEPO受容体に対する結合親和性はrHuEPOに比較して低いものの,ラットおよび透析患者における静脈内投与時の血中消失半減期は約3倍に延長されている.その結果,貧血症状を呈する慢性腎不全ラットにおいて,ネスプは単回静脈内投与時にはrHuEPOの1/3の用量で,また反復静脈内投与時(総投与量が等しい場合)にはrHuEPOの1/3の投与頻度で,ほぼ同等の貧血改善効果を示す.血液透析(HD)患者においては2週間に1回,腹膜透析(PD)患者においては4週間に1回の最大投与間隔で,ネスプはHb濃度を安定して11 g/dL前後に維持でき,かつHb濃度の上昇に付随して,健康関連の生活の質(QOL)が全般的に改善することが国内臨床試験で認められている.ネスプは本邦では,2007年7月より,「透析施行中の腎性貧血」を効能・効果として,rHuEPO製剤からの切り替え下で臨床使用が開始されており,透析患者の貧血改善ならびにQOL向上はもとより,透析医療現場において,投与頻度の減少に基づく医療事故の低減や様々な業務改善が期待されている.
- 2008-04-01
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