抗てんかん薬による骨粗鬆症の動物モデルの有用性について
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概要
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骨粗鬆症とは低骨量でかつ骨組織の微細構造が変化し,そのため骨が脆くなり骨折しやすくなった病態とされる.抗てんかん薬のうちフェニトイン,バルプロ酸ナトリウム,ゾニサミドをそれぞれ雄ラットに5週間連続投与することにより,対照群と比較して有意な骨密度の減少が認められる.また,この抗てんかん薬による骨密度減少症に対して,用いたすべての骨粗鬆症治療薬に予防回復的効果があることが明らかとなった.加えて,各種の生化学的検査より,血清カルシウム量はいずれの抗てんかん薬投与によっても変化はなく,PTHの量にも変化が認められず,続発性副甲状腺機能亢進状態ではないと判断された.また,ビタミンD3の代謝にも影響がなく,骨量のみが減少する特徴を有した.他方,骨代謝マーカー(骨吸収マーカー:酒石酸抵抗性ホスファターゼ,ピリジノリンなど.骨形成マーカー:オステオカルシン,アルカリホスファターゼなど)の動向から,抗てんかん薬投与による骨代謝への影響を検討した.それらの結果,フェニトインはどちらかというと骨形成の低下の方が顕著であり,とりわけビタミンKとオステオカルシン系の低下が一因となっている可能性が認められた.また,ゾニサミドにより誘発される骨密度の減少は,骨形成系に対する影響に関しては,フェニトインと比べてかなり弱く,主に骨吸収系を介したものと思われた.次に,バルプロ酸ナトリウムによる場合は,骨代謝回転が亢進している状態だが,骨吸収が優位となっているために,骨密度減少が起きている可能性が強いという結果を得た.以上のことより,抗てんかん薬の連続投与により骨密度減少が起こり,骨代謝(骨形成系と骨吸収系)に対して影響を与えるが,それらの作用強度は各薬物により異なり同一ではなかった.このモデルは,新規の骨粗鬆症治療薬の評価モデルとしての有用性があり,骨粗鬆症の病態機構の研究にも役立つものと思われる.しかし,いずれの抗てんかん薬も骨粗鬆症研究に現在広く用いられている卵巣摘除モデルと比較して骨量の減少が比較的軽微なモデルであることを理解しておくべきである.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
- 2006-05-01
著者
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小野寺 憲治
横浜薬科大学薬物治療学
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小野寺 憲治
東北大学歯学部薬理学教室
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小野寺 憲治
岡山大学大学院生体制御科学専攻機能制御学
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小野寺 憲治
岡山大学大学院医歯学総合研究科機能制御学歯科薬理学分野
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栗林 義和
大日本住友製薬株式会社 研究本部 研究統括部
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高橋 温
東北大学歯学部附属病院 障害者歯科治療部
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小野寺 憲治
東北大学歯学部歯科薬理学教室
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