ノシセプチンの薬理および生理作用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
最近,オピオイド受容体のホモロジースクリーニングからオピオイドペプチドに感受性を示さない新たな遺伝子がクローニングされた.このorphan受容体(ORL1)を哺乳動物細胞に発現させたものを利用して,脳から内在性ペプチドリガンド,ノシセプチンが発見された.このノシセプチンはオピオイドペプチドと非常に類似したアミノ酸配列を示すにも関わらず,オピオイドペプチドとは逆に痛覚過敏や抗オピオイド作用を示したことで大変注目された.しかしながら,その後の研究により,このペプチドは投与経路や用量によって侵害作用並びに抗侵害作用を示すことが明らかとなった.著者らも新しい末梢性疼痛試験法を用い,末梢におけるノシセプチンの痺痛機構における役割を検討した.その結果,低用量のノシセプチンは侵害受容器からのサブスタンスP遊離を介して侵害反応を示し,一方,高用量では侵害性物質によるホスホリパーゼCの活性化の阻害を介して抗侵害作用を示すことを見出した.末梢神経系において見出されたこの概念は,中枢神経系におけるノシセプチンの二相性作用のメカニズムに関しても適用できるものと考えられる.最近,ノシセプチンの生理的役割がその受容体の遺伝子欠損マウスを用い検討されており,聴覚機能における関与が見出され,次いでモルヒネ耐性形成機構における関与が見出された.本稿では疼痛機構や記憶学習などにおけるノシセプチンおよびその受容体の生理的役割について,ノシセプチン受容体の遺伝子欠損マウスを用いた結果をもとに検討する.
- 1999-12-01
著者
関連論文
- ニューロメーターを用いた新しい知覚線維選択的侵害受容評価法
- オピオイド耐性機構に関与するグルタミン酸-NMDA受容体アンチオピオイド機構 (特集 痛みと遺伝子多型)
- 痛みの克服に向けて
- 慢性疼痛の初発原因分子としてのリゾホスファチジン酸 : フィードフォワード性 de novo LPA 合成
- 脱髄性神経因性疼痛機序を担う脂質メディエーター (特集 第41回 脳のシンポジウム) -- (疼痛治療の最近の展望)
- ネクローシスを抑制する脳保護タンパク質プロサイモシンα
- Studies on Peptides. XCIV. Synthesis and Activity of Kyotorphin and Its Analogs
- 6,14-Ethenomorphine類の合成と腫瘍細胞増殖抑制作用
- Synthesis and Analgesic Activity of Neo-kyotorphin Analogs
- 化学療法に伴う神経因性疼痛メカニズム
- 脱髄性神経因性疼痛におけるLPAの役割 (第1土曜特集 難治性疼痛と闘う--研究と治療の最前線) -- (痛みを切る--根底にある分子メカニズム)
- FGF-1のCa[2+]結合性運搬タンパク群との相互作用による非古典的遊離 (タンパク質間相互作用)
- 傷害性神経因性疼痛誘発を担うリゾホスファチジン酸
- 序文
- 薬理学サマーセミナー2005長崎「痛み研究への誘い-研究戦略と方法論」
- オピオイド研究の最近の進歩
- オピオイド研究とともに29年
- 痛みと QOL -モルヒネ鎮痛耐性とモルヒネ抵抗性神経因性疼痛
- オピオイド受容体の神経生物学シンポジウム
- モルヒネ耐性と依存性形成の分子基盤
- 脳を守る神経細胞死モードスイッチと神経新生
- オピオイドレセプタ-とキョ-トルフィンレセプタ- (レセプタ-の化学)
- エンケファリン遊離因子としてのキョ-トルフィン (オピオイド・ペプチド)
- 脳内においてキョートルフィン(Tyr-Arg)はいかに生成されるか(発表論文抄録(1985年))
- 神経因性痩痛評価のための末梢性痩痛試験法
- 公開シンポジウム-日本生物学的精神医学会合同企画シンポジウム- : 神経ステロイド-その脳機能調節作用と分子基盤
- 卵母細胞発現系における受容体--G蛋白再構成実験を利用した受容体同種脱感作機構の解析 (受容体・チャネル・トランスポ-タ-)
- 痛みの分子機構
- モルヒネ依存形成にかかわる神経回路変化--アンチオピオイド神経系の可塑的変化 (薬物依存症の神経科学)
- シグマ受容体と神経ステロイド
- オピオイド鎮痛の耐性発現の分子機構
- 脳を守るタンパク質プロサイモシンα
- Parkinson病態モデルにおけるドパミンレセプタ-とGタンパク質 (行動異常・精神障害の分子機序)
- ジペプチド性神経活性物質キョ-トルフィンの生合成機構
- ノシセプチンの薬理および生理作用
- 鎮痛活性ペプチドキョートルフィンの脳からの単離とその鎮痛作用機序に関する研究(発表論文抄録(1985年))
- 鎮痛活性ペプチド・キョートルフィンの脳からの単離とその鎮痛作用機序に関する研究
- mRNA表現型の多様性とRNA編集 (RNAの多彩な機能)
- JNK/c-junシグナル伝達を介するリゾホスファチジン酸誘発性脱髄機構