ヒダカトウヒレンの1新変種
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概要
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北海道の高山フロラに関する解析的研究の一環として, トウヒレン属(キク科)の一部について分類学的研究を行った。1986年の9月に, 上川支庁士別市犬牛別岳の蛇紋岩地域において所属不明のトウヒレン属植物が発見された(Fig. 1)。花序や総苞の形質からナガバキタアザミに近縁と考えられたので, 道南地方と大雪山系, 日高山脈, 知床半島のナガバキタアザミ群との比較にもとづいて分類学的な検討を行った。その結果次のことが明らかになった。 1)日高山脈南部のアポイ岳とその周辺に固有であることが知られているヒダカトウヒレンは, 最初は独立種として記載されたものの, これまでキタミアザミ(広義)の種内分類群として認識されることが多かった。しかしヒダカトウヒレンは, 茎葉が上部にいくにしたがって急に小さくなる点と総苞が狭筒形で総苞片が6列に並び, 外総苞片の先端が尾状に伸長するという特徴にもとづき, ナガバキタアザミあるいはキタアザミからはっきりと区別される(Figs. 2,3)。2)問題のトウヒレン属植物は上記の茎葉と総苞の形質から, ヒダカトウヒレンに近縁である。しかし犬牛別岳産植物は, 根茎が地下を横走すること, 根出葉が花時に宿存しないこと, 葉の向軸面が鮮緑色であることでヒダカトウヒレンとは異なる。これらの結果にもとづき犬牛別岳産植物はヒダカトウヒレンの変種として認識されることが明らかになったので, 新変種ウリュウトウヒレンSaussurea kudoana TATEWAKI et KITAMURA var. uryuensis, var. nov. として記載した。この植物については小泉秀雄氏が, 犬牛別岳近傍の剣渕町産個体にもとづいて, 裸名「テシオトウヒレンS. teshioensis」を与えている。しかし問題の植物は雨竜地方の蛇紋岩地域に固有の植物であるので新たにウリュウトウヒレンの名を与えた(例えば天塩・間寒別の蛇紋岩地域には見出されてはいない)。雨竜蛇紋岩地に固有の植物としては, ウリュウトウヒレンの他に, キキョウ科のシラトリシャジンがある。
- 1987-12-01
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