東北地方産出の渉禽鳥類の化石
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概要
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東北地方では, 鳥類化石が産出しているのは山形県と宮城県の鮮新統, および秋田県の第四系であった。このほかに, 岩手県の鮮新統から海鳥の化石が新たに産出している。それらの産地, 時代, 筆者の分類学的見解は以下の通りである。 a, 秋田県南秋田郡昭和町豊川槻木(後期更新世) : コウノトリの1種 Ciconia sp. 右趺蹠骨, 加藤, 1975;高安, 1980. b, 山形県最上炭田(鮮新世) : ツル科の足痕化石, 吉田, 1965; YOSHIDA, 1967. c, 宮城県仙台市竜ノ口(鮮新世) : 水鳥の骨, 鹿間, 1975. d, 岩手県胆沢郡前沢町(鮮新世) : ペリカン目に属する大型の海鳥の上腕骨, 川上雄司・大石雅之両氏の私信による。 秋田県南秋田郡昭和町豊川槻木は, リスーウルム間氷期後に形成された標高 20-30m の段丘上に噴出したアスファルトの採掘場所で, アスファルト中から哺乳類化石とともに産出した。山形県最上炭田の化石は, 本合海層中の褐炭層形成後の河成の砂質泥岩層の層理面に残されていた渉禽類の足痕化石である。宮城県仙台市竜ノ口は当時の河口付近の堆積物の露出する場所で, 産出している鳥類化石も淡水-汽水域に生息する水鳥の1種であると考えられる。岩手県胆沢郡前沢町は当時の内海の堆積物が分布しており, 産出した鳥類化石はペリカン目に属する大型の海鳥の1種である。 筆者は, てれらの鳥類化石の中で, 秋田県南秋田郡槻木のアスファルトから産出したコウノトリ類 (高安, 1980), 山形県最上炭田産出の渉禽類の足痕化石 (YOSHIDA, 1967) について記載を行った。槻木産のコウノトリは, 趺蹠骨の化石で, コウノトリ属 Ciconia の1種 Ciconia sp. に分類されたが, 種の段階で既知の種とは異なっている。最上炭田の足痕化石は, 現在の主要な分類群の足痕の形態で比較した結果, YOSHIDA (1967) が先に同定したと同じくツル科にもっとも近いことが明らかとなった。 これらの2種の化石は, 陸生渉禽類の化石としては日本からの最初の産出である。
- 1984-12-01
著者
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小野 慶一
国立科学博物館地学研究部
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小野 慶一
Department Of Geology National Science Museum Tokyo
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小野 慶一
科博
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小野 慶一
国立科学博物館地学研究所
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