保健所による立入検査を医療機関はどう受け止めているか
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
目的 医療機関に対して立入検査に関するアンケート調査を行い,保健所と立入検査の現状および課題と今後のあり方について検討した。<br/>方法 平成14年12月に全国の12保健所管内全ての276病院に郵送にて質問調査を行った。218病院から得た回答を分析した。<br/>結果 1)立入検査の実施頻度については年 1 回が良いは 6 割で,4 割は隔年を希望していた。2)検査が「とても役立つ」とする意見は,「院内感染対策」,「医療事故防止対策」,「感染性廃棄物の取り扱い・管理」の項目で多かった。3)行政職員の専門知識が「充分である」とする意見は 6 割を超すが,不足とする意見も約 2 割あった。4)指導内容では「同一項目で検査年度や調査員によって異なる」など約 7 割の病院が不適切な点があると指摘した。5)今後助言・指導が必要と思われる分野として「他の医療機関で行われている良い取り組みについての情報」,「医療事故防止対策」,「院内感染対策」が挙げられた。6)検査が「負担とは思わない」が 6 割強だが,「やや負担である」も 4 割弱みられた。7)今後のあるべき姿として「法令に基づく項目の検査・指導のみでなく,院内感染対策や医療事故防止対策など幅広く助言した方がよい」の考え方が大多数であった。8)保健所に対して,医療機関との連携協力の強化,地域医療のニーズに応じたネットワーク作り,国や地域の有用な情報の発信,国・県・市民とのパイプ役などの機能を期待する自由意見がみられた。<br/>結論 立入検査に関して保健所職員の資質向上や検査手法の標準化などの課題が指摘されているが,今回初めて医療機関側の意見が明らかにされ,その課題がより一層明らかとなった。立入検査は国民の健康と安全を守る公衆衛生上の重要な業務であり,自治事務として院内感染防止や医療安全対策普及など目的を一層明確にして取り組み,質の向上を図る必要がある。そのため国や自治体主管部局の積極的な関与のもと,共通の判断・指導基準の作成や全国的な情報交換と研修を行い,かつ保健所は医療機関との日常的な連携のもと,不要な負担を減らす配慮や,行政職員としての意識向上と専門知識の研鑽など普段の努力が望まれる。
- 日本公衆衛生学会の論文
著者
-
田鎖 良樹
青森県青森保健所
-
佐藤 牧人
仙台市青葉保健所
-
森泉 茂樹
仙台市若林保健所
-
桜山 豊夫
東京都八王子保健所
-
小柳 博靖
横浜市中区保健所
-
池田 和功
堺市保健所
-
阿彦 忠之
山形県村山保健所
-
竹之内 直人
松山市保健所
-
岡田 尚久
島根県出雲保健所
-
佐々木 淳
宮城県石巻保健所
-
大神 貴史
大分県佐伯保健所
-
藤枝 隆
茨城県水戸保健所
-
能登 隆元
石川県南加賀保健所
-
川島 ひろ子
石川県石川中央保健所
-
濃沼 信夫
東北大学大学院
関連論文
- 看護人員配置の多寡による医療の質・安全への影響
- 局所前立腺癌と性機能に関する研究 : 手術療法と放射線療法の比較検討
- さらに積極的な化学予防の実施について
- 患者の早期発見-仙台市の新しい試み 宵の口検診
- 患者の早期発見 : 仙台市の新しい試み 宵の口検診
- 医療機関への立入検査と保健所機能に関する現状と課題
- 新人看護師の職務におけるリアリティーショック出現要因の検討 : 終末期患者対応の経験年数別心理を分析して
- 医療の質をどう保証するか
- 乳幼児健診を受診した母親の育児不安に関する調査
- 禁煙ガイドライン
- 禁煙ガイドライン(循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2003-2004年度合同研究班報告))
- ダイジェスト版 : 禁煙ガイドライン
- 体育会所属学生の喫煙状況と関連要因 : 効果的な喫煙防止対策への提言
- 東北福祉大学定期学生健康診断の現状について(第1報)
- 病院管理とNPM
- 結核対策のブレイクスルー
- 精神障害者は補完代替医療とどのように向き合っているか
- 補完代替医療利用者の心理社会的背景に関する一考察
- 準寝たきり高齢者の自立度と心理的QOLの向上を目指した Life Review による介入プログラムの試行とその効果
- 自立および準寝たきり高齢者の自立度の変化に影響する予測因子の解明 : 身体・心理・社会的要因から
- 山形県における脳卒中発症者の予後, ならびに生活全体の満足度とその関連要因
- 次世紀に結ぶ健康政策の科学 : その理論と実践活動
- 乳幼児期肥満と成人時肥満との関連 : 石川県における出生後20年間の縦断研究
- 禁煙ガイドライン
- 乳癌患者の心理社会的支援に関する外科医の意識 : 第2報 : 外科医から精神科医/心療内科医/心理専門家への患者紹介行動
- 保健所による立入検査を医療機関はどう受け止めているか
- 急性期病棟におけるインシデント・アクシデント発生と看護業務・投入マンパワー量との関係
- 嗜好飲料の摂取と骨粗鬆症性骨折に関する研究
- 精神科病棟における火災のリスクと課題について
- 食品摂取品目数と骨粗鬆症関連骨折に関する研究
- 急性期病棟における看護業務およびマンパワー量と患者安全との関係
- 医師の勤務状況とエラー・ニアミス要因の検討 : 地方の中核病院の勤務医の場合
- 勤務医の勤務状況とエラー・ニアミス要因の検討
- 骨粗鬆症関連骨折に関与する可能性のある生活習慣の検討
- がん患者の経済的負担
- 院内報告制度に関する個人認識と影響要因の関係モデル
- 民主主義と健康状態との関係に関する研究試論
- 社会的に構築された健康状態の性差
- 病院・一般診療所における喫煙対策の現状
- 脳卒中リハビリテーションの費用効用分析
- 診療報酬改定による脳梗塞リハビリテーションへの影響 : 2006年診療報酬改定前後の検討
- 精神病院に必要とされる心理臨床家の適正数を算定する試み : 福井県の精神医療状況をもとにして
- I.結核集団感染の現状と今後の対策
- 座談会 保健所と保健所長 (特集 現代の保健所論(1))
- 保健所と医療機関との「連携」のための具体策 (特集 今求められる結核対策(2)事例集)
- 保健所の結核医療への関わり (特集 地域保健と地域医療)
- 基本健康診査の40・50歳節目健診受診者における過去5年間と翌年の受診状況およびその関連要因
- 北海道に於ける病院医師規模と医師労働生産性計測の試み : 医師労働生産性の制約要因の検討
- 微生物学講座(2)細菌 結核とその対策--院内・施設内感染を防止するために
- 成人病登録を活用した老人保健事業の計画策定--胃がん対策を例として
- 訪問看護 在宅ケアを支援する社会制度と保健福祉サービス
- 結核治療を促進する制度 (プライマリケアのための結核診療--忘れてはならない病気を見逃さないために)
- 結核対策のブレイクスルー
- 結核治療の成功のために
- 結核治療の成功のために
- 院内感染予防を支援する保健所の試み--院内感染を予防するためのチェックシートとネットワークを中心に (特集 公衆衛生における医療)
- 医療福祉システム論からみた精神障害者退院促進の現状と課題
- 在宅療養支援診療所数の経年推移と在宅看取りの地域性に関する一考察
- 保健所の組織構造面からの検討 (特集 健康危機管理) -- (健康危機管理を視点に置いた保健所の組織構造と機能強化)
- 結核対策における保健所の役割 (特集 結核対策新時代--結核予防法のリビジョン)
- 日本公衆衛生学会における喫煙対策の取り組み (特集 喫煙対策はどこまで進んだか)
- 感染症の見直しに向けて--保健所長の立場から (特集 感染症法の成果と提言)
- 健康日本21の効果的な展開方法--保健所の役割 (特集 ヘルスプロモーションの実践(1))
- 公衆衛生における専門性--現場からの意見 (特集 大学の公衆衛生教育)
- 疾病別統計情報の質の向上と活用法--結核を中心に (特集 公衆衛生をささえるもの--情報)
- 保健所と市町村との連携および支援 (特集 保健所の組織改革と機能強化)
- 閉じこもり高齢者への保健福祉活動の実際 (特集 在宅高齢者のケア)
- DOTSの成果と問題点, 対策
- 21世紀の日本の結核対策
- 結核発病の背景因子 (第1特集 成人期の結核対策--その予防と治療)
- 「プロジェクト方式」で人を育てるためのポイント (特集 行政に働く保健師の腕の磨きどころと磨き方)
- 高齢者結核患者の早期発見方策の現状と課題
- 行政上の結核対策と検査情報
- 地方分権時代の結核対策
- 高齢者の介護と結核対策 (特集 在宅ケアにおける感染症対策 押さえておきたいポイント)
- 大都市の結核対策
- 大都市の結核対策
- 第73回総会シンポジウム III.結核の院内感染
- 結核の院内感染
- 結核の診断精度と罹患率への影響
- 平成9年度 福祉事務所長等海外調査研究レポ-ト「米国の社会福祉事情と福祉改革について」
- 仙台市における保健福祉行政の取り組み (特集 大都市での活動を模索する) -- (仙台市における模索)
- 医療行政における保健所の役割 (特集 公衆衛生における医療)
- 仙台市泉区における在宅療養支援の取り組みについて
- 特別寄稿 知っておきたい感染症の知識
- 学校における新しい結核対策と保健所の役割
- 高齢精神障害者の延命治療の是非/胃瘻造設の是非 (特集 死の臨床--高齢精神障害者の生と死)
- 痴呆性老人を抱える家族の背景を考える
- 高齢者福祉・介護保険サービスと結核 (特集 地域健康リスクと結核) -- (PART2 市町村保健福祉事業と結核)
- 集団感染事例に学ぶ (主題 小児の結核)
- 保健所における医療監視の位置付け (特集 公衆衛生における医療)
- 入院中の子どもを守る (特集 子どもを守る)
- 仙台市 (特集 大都市における地域保健サービス--その体制と戦略) -- (保健所(保健福祉センター)各区体制の地域保健サービス)
- 皮膚濾胞辺縁帯リンパ腫とアミロイドーシスを合併したシェーグレン症候群の1例
- ウイルス肝炎対策における地域の現状と課題 (特集 ウイルス肝炎)
- 福岡県の旧石炭産業地域における社会状況ならびに健康状況
- 原子力・放射線災害の危機管理と保健所活動 (特集 放射線と向き合う)
- 乳幼児期肥満と成人時肥満との関連 : 石川県における出生後20年間の縦断研究
- シンポジウム 結核集団感染の現状と対策 (第16回〔日本環境感染学会〕総会学術集会 プログラム・抄録)
- 保健所による立入検査を医療機関はどう受け止めているか