在宅痴呆症高齢者の10年間の死亡率,死因および死亡場所
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概要
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目的 一地方都市での高齢者の全数調査により設定した痴呆症高齢者コホート集団について,基礎調査後10年間の生存時間,死因と死亡場所を,非痴呆症高齢者と比較することにより,痴呆症高齢者の死亡リスク,死因と死亡場所の特徴,痴呆症高齢者の死亡に影響する要因について,病型,重症度,ADL(日常生活動作)の面から明らかにすることを目的として行った。<br/>方法 福井県の K 市(人口31,000人)で,平成 4 年 4 月に市内在住の65歳以上の在宅高齢者全員を対象とした生活基礎調査を行い,二次調査の結果,精神科医により201人が痴呆症と診断された。痴呆症高齢者と,それ以外の高齢者(以下,非痴呆症高齢者)の,平成 4 年 7 月 1 日から10年間の死亡年月日,死因,死亡場所を,人口動態調査死亡票等により把握した。死因分類は,ICD-10 の死因簡易分類コードにしたがった。痴呆症の有無の死亡に及ぼす影響を Cox 回帰分析で,また,痴呆症高齢者のうち,死亡または転出日が把握できた200人について,Kaplan-Meier 法,Cox 回帰分析により,生存時間中央値,死亡の関連要因を解析した。性別に,痴呆症の病型と重症度,寝たきりの有無,歩行,食事,更衣,入浴,排泄の障害の有無,喫煙および毎日飲酒習慣の有無の10項目を説明変数とした。<br/>結果 10年間に追跡できた痴呆症高齢者198人のうち170人(85.9%)が,非痴呆症高齢者5004人のうち1,696人(33.9%)が死亡していた。年令を層別化して解析を行った結果,痴呆症があると死亡リスクは2.99倍高くなり,女性は男性の0.56倍であった。痴呆症高齢者は非痴呆症高齢者と比較して脳血管疾患による死亡が多く,全死亡の37%を占めていた。とくに脳血管性と鑑別不能型においては47%を占めていた。死亡場所としては,老人ホーム・施設が多く,病院・医院は少なかった。<br/> 性別に Cox 回帰分析を行った結果,男性では中等症・重症の痴呆,女性では鑑別不能型が,また男女とも寝たきり,歩行障害,排泄障害ありが,死亡リスクを有意に高める要因であった。<br/>結論 痴呆症があると,高齢者の死亡リスクは 3 倍高くなる。その要因として,痴呆症高齢者では脳血管疾患による死亡が,非痴呆症高齢者よりも高いことが一因と考えられた。また,痴呆症高齢者において,病型,重症度,ADL が死亡を高める要因であった。
- 日本公衆衛生学会の論文
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