MRSAタイピングを用いた職員・患者間の伝播防止対策の効果に関する研究
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概要
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A病棟で2009年12月から2010年4月にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の伝播件数が増加した.感染対策チーム(ICT)および院内感染防止対策委員会(ICC)が感染対策の強化を図ったが効果が得られなかった.そこで,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によるMRSAタイピングを行い,患者・職員間の伝播の存在を証明することがMRSA伝播防止対策に効果があるか検討した.2010年3月にA病棟全職員に行った鼻腔培養での陽性者8名と,2009年1月~2010年3月に検出された42名の患者株のタイピングを行った.A病棟における伝播数は,2009年12月2件,2010年1月3件,2月6件と増加していた.2月にICTから感染対策の強化を指導し,伝播数は3月1件に減少したが,4月には再び3件と再上昇した.PCR法により職員株は4タイプに患者株は16タイプに分類された.職員株4タイプは患者株と同一であった.これらの結果を4月にA病棟およびICCに報告し,保菌している職員の除菌も行った.介入前後の5ヶ月間の伝播数/新規入院患者数は13.4%(15件/112名)から0.6%(1件/154名)と有意に減少した(p<0.001).MRSAの保菌調査とタイピングを実施し,職員・患者間のMRSA伝播の存在を証明することは,職員の意識の変容と伝播防止対策に効果があると考えられる.
- 一般社団法人 日本環境感染学会の論文
著者
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渡邊 真裕子
国立病院機構鹿児島医療センター
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吉満 桂子
国立病院機構鹿児島医療センター
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吉永 正夫
国立病院機構九州循環器病センター小児科
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谷口 潤
国立病院機構鹿児島医療センター 感染制御チーム
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花田 修一
国立病院機構鹿児島医療センター 血液内科
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花田 修一
国立病院機構鹿児島医療センター 血液内科
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櫛田 千晴
国立病院機構鹿児島医療センター 臨床検査科
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吉永 正夫
国立病院機構鹿児島医療センター 小児科
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渡邊 真裕子
国立病院機構鹿児島医療センター 看護部
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谷口 潤
国立病院機構嬉野医療センター
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