「教育と責任」の社会学序説:──「因果関係と責任」問題の考察──
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ある出来事が問題視されることが起点となって,その出来事をもたらした原因探求が開始される。原因探求は,問題事象を理解し解決策を検討するためであると同時に,問題事象をもたらした責任の所在を特定するための試みと考えられている。それゆえ原因探求に躍起となるのだが,そうした試みはしばしば泥沼化し,問題事象は混迷を深め悲劇をもたらすことがある。<BR> 本稿では,いじめ自殺と水俣病という,ほとんど無関係と思われる社会問題を対比させることで,「責任の根拠としての原因」という認識に導かれた言説実践がどのような現実を生み出してきたか,そして今も生み出しているかを明らかにしようと試みた。そのためにまずは,「意志と責任」「年齢と責任」「カテゴリーと責任」「偶然と責任」という視点から「因果関係と責任」の論理関係を検討することで,「責任の根拠として原因」という認識の論理的矛盾を明らかにした。と同時に,私たちの社会のなかで原因解明と責任追及がいかに実践されているかを言説分析の視点から解明することで「実践と認識の二重性」を指摘し,そうした二重性がもたらす困難を描き出すために,いじめ自殺と水俣病に見られる構造的同型性(=原因究明言説の隘路)を論じた。<BR> そして最後に,「責任の根拠としての原因」という認識がもたらす困難から脱却するための二つの方向性を示唆した。一つは,無過失責任論の可能性であり,もう一つは責任言説の再編可能性である。
著者
関連論文
- 学校的社会化の諸相(2) : とへの着目(IV-11部会 社会化,研究発表IV,一般研究報告)
- 2.学校的社会化の諸相(1) : 教室における知識とふるまいの習得(III-5部会 学校における社会化,研究発表III)
- 3.文化としての涙(4) : 遊び場面のフィールドワーク/「卒業式」場面のTVドラマ分析(IV-10部会 子ども論,研究発表IV,日本教育社会学会第58回大会)
- 文化としての涙(3) : 保育園児のをめぐる交渉手続き(子ども)
- 文化としての涙(2) : 保育園児のをめぐるしつけ相互行為場面から(IV-2 子ども)
- 文化としての涙(1) : 子ども文化における分析に向けて(III-1 ジェンダー(1))
- 子ども間相互行為における参与の成立過程(研究法)
- 今津 孝次郎[著], 『いじめ問題の発生・展開と今後の課題』, A5判, 169頁, 本体2,300円, 黎明書房, 2005年11月刊
- 構築主義の立場から : 因果論的発想からの脱却をめざして
- 『少年犯罪の社会的構築「山形マット死事件」迷宮の構図』, 北澤毅・片桐隆嗣著, B6判, 288頁, 2800円, 東洋館出版社, 2002年
- 教育問題の社会的構築〔I〕(II-7部会 教育問題の社会学)
- 1. 社会問題としての児童虐待 : 「児童虐待防止法」(昭和8年)をめぐる「保護される児童」の構築主義的分析(V-8部会 【一般部会】教育病理(1),研究発表V,一般研究報告)
- 1. 記録される「個性」 : 児童理解実践としての個性調査(II-4部会 【一般部会】教育の歴史(1),研究発表II,一般研究報告)
- 1. 学校的社会化の諸相(3) : とへの着目(III-3部会 【一般部会】学校(1),研究発表III,一般研究報告)
- 「教育と責任」の社会学序説:──「因果関係と責任」問題の考察──
- 4. いじめ問題の諸相(2) : 「大津いじめ自殺」事件のテレビ番組分析の可能性(IV-1部会 教育問題(2),研究発表IV)
- 4. いじめ問題の諸相(1) : 「大津いじめ自殺」事件にみる「社会問題」の構築(I-3部会 教育問題(1),研究発表I)
- 3. 学校的社会化の諸相(4) : 相互行為における非対称性(II-1部会 子ども(2),研究発表II)
- 3. 日本近代における家庭の学校化 : 家庭調査を中心に(III-3部会 教育の歴史社会学(2),研究発表III)