附子の品質と毒性に関する史的考察
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概要
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漢方生薬「附子」は強毒性のブシジエステルアルカロイド(BDA)を含むが,生薬原料には BDA 含量の高いものがよいと考えられてきた。一方,第十六改正日本薬局方では減毒処理方法および BDA 含量の上限値が規定された。本研究では,古文献の附子の良品に関する記載内容を検討し,附子の形状と BDA 含量の関係について調査した。その結果,大型で角(細根基部肥大部)がある附子が尊ばれていたこと,また使用時は,原材料(子根)から細根基部肥大部(節・角)および根頭部(臍)を切り取る修治が行われていたことが明らかとなった。大型の附子は BDA 含量が低値に安定し,根頭部(臍)および細根基部肥大部(角)は子根本体に比べて BDA 含量が高いことが明らかになったことから,選品においても修治法においても BDA 含量を低くする目的があった可能性が示唆された。したがって,古来の良質品附子は毒性が低くかつ安定したものであったと考証した。
著者
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大井 逸輝
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科薬学系資源生薬学研究室
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河 亮一
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科薬学系資源生薬学研究室
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御影 雅幸
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科資源生薬学研究室
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田中 健太郎
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科薬学系資源生薬学研究室
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