エピジェネティック因子ＨＰ１γを介した心筋およびペースメーカ細胞新規誘導法の開発

概要

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細胞移植による徐脈性不整脈の再生医療においては，移植する細胞数の確保が大きな課題である．しかしながら，幹細胞からのペースメーカ細胞など心筋細胞の分化効率は極めて低く，より効率的な心筋分化誘導系の確立が急務である．そこで本研究では，心筋分化を促進する因子としてエピジェネティック制御因子Heterochromatin Protein 1γ（HP1γ）に着目し，P19細胞（胚性癌腫細胞）を用いて，HP1γ強制発現株を樹立した．心筋分化誘導を行ったところ，野生型P19細胞がまったく分化を示さなかったのに対して，HP1γ強制発現細胞では中胚葉細胞への分化促進に加えて，拍動する心筋細胞が効率よく見いだされた．また，RT-PCRや免疫染色，フローサイトメトリーの結果から，心筋細胞，ペースメーカ細胞で発現する各種マーカー遺伝子の発現が認められ，パッチクランプ法による電気生理学的解析では，自動能，各種イオンチャネル電流が検出された．さらに，この心筋細胞は自律神経作動薬に対して応答し，拍動数が増減することもわかった．これらの結果から，HP1γによって，効率よく心筋およびペースメーカ細胞を分化誘導できることが判明した．