頭蓋の形態小変異からみたアイヌとその隣人たち
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
北海道アイヌの成立には,オホーツク人の遺伝的影響がかなり強く及んでいたという近年の研究成果に鑑みて,視野の中心を北海道に据えて,東アジアと北東アジアにおける北海道アイヌの人類学的位置を,頭蓋の形態小変異を指標にして,概観してみた。使用した形態小変異は観察者間誤差の少ない9項目で,日本列島の10集団とサハリンおよび大陸北東アジアの3集団を対象に分析を行った。集団間の親疎関係の推定にはスミスの距離(MMD)を用い,棒グラフとMMDマトリックスの主座標分析で集団間の相互関係を図示した。オホーツク人は北海道アイヌとサハリン・アムール・バイカルといった北東アジア集団のほぼ中間に位置したが,北海道アイヌとの形態距離はかなり近く,北海道や本州の縄文人と同程度であった。これに対して,大陸東アジアにその原郷が求められる弥生系集団は,北海道アイヌから遠く離れていた。9項目による分析結果が妥当なものであったかどうかを検証し,さらに,北海道の続縄文人の形態学的な位置づけを明らかにするために,著者のひとりが独自にデータを収集した12集団についても,20項目の形態小変異を用いて,同様の分析を行った。9項目による分析結果と20項目による分析結果はほとんど同じで,北海道アイヌの母体になった集団は,やはり従来の指摘どおり,北海道や本州の縄文人と北海道の続縄文人であると考えられたが,北海道アイヌの成立には,オホーツク人の遺伝的影響をも考慮しなければならないと思われる。
著者
-
澤田 純明
聖マリアンナ医科大学医学部解剖学講座
-
百々 幸雄
東北大学医学部
-
川久保 善智
佐賀大学医学部解剖学・人類学分野
-
石田 肇
琉球大学医学部人体解剖学講座
-
石田 肇
琉球大学医学研究科人体解剖学講座
関連論文
- 骨組織形態学的方法による骨小片の人獣鑑別:東北北部の平安時代遺跡から出土した焼骨の分析
- 踵骨の距骨関節面の形態変異についてII : 日本列島諸集団を対象にした人類学的研究
- 東北地方にアイヌの足跡を辿る: 発掘人骨頭蓋の計測的・非計測的研究
- 踵骨の距骨関節面の形態変異についてI : 現代日本人資料を用いた基礎形態学的研究
- 青森県南郷村畑内遺跡出土人骨についてのミトコンドリアDNA解析
- 中世日本人の頭蓋形態の変異
- 下北半島浜尻屋貝塚出土中世小児人骨の歯冠形質
- 頭蓋の形態小変異からみた日本列島の人類史
- 愛媛県城川町黒瀬川洞発掘調査報告
- 骨組織形態学的方法による骨小片の人獣鑑別 : 東北北部の平安時代遺跡から出土した焼骨の分析
- 沖縄県久米島近世人骨の距骨蹲踞面形状と脛骨蹲踞面形状の関係
- 沖縄久米島近世人骨における踵骨の距骨関節面形状について
- 東北地方にアイヌの足跡を辿る : 発掘人骨頭蓋の計測的・非計測的研究
- 頭蓋の形態小変異からみたアイヌとその隣人たち(1)東アジア・北東アジアにおける北海道アイヌの人類学的位置
- 頭蓋の形態小変異からみたアイヌとその隣人たち
- 頭蓋の形態小変異からみたアイヌとその隣人たち
- 頭蓋の形態小変異からみたアイヌとその隣人たち : I. 東アジア・北東アジアにおける北海道アイヌの人類学的位置
- Human skeletal remains of a chief-retainer family of the Akashi clan from the Unseiji site (Akashi, Japan) in the Edo period
- 北海道出土人骨の鉛含有量
- 頭蓋の形態小変異からみたアイヌとその隣人たち : II. アイヌの地域差
- 頭蓋の形態小変異からみたアイヌとその隣人たち : III. 隣接集団との親疎関係