原発性腹膜癌の脳転移,髄膜転移に対して複数の放射線療法および化学療法を行った1例
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概要
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概要 原発性腹膜癌の中枢神経系転移についての報告例はあまりないが,病理学的に近似している卵巣漿液性腺癌の中枢神経系転移はまれであることから,やはり頻度は低いと思われる.しかし,近年の化学療法の進歩によって,これらの疾患の患者の生存年数は長くなっており,それに伴って中枢神経系転移の頻度も増えていると推察される.今回われわれは,原発性腹膜癌から脳転移,髄膜転移を発症し,複数の放射線療法,化学療法を行った症例を経験したので報告する.患者は49歳で,開腹手術所見と胸水細胞診陽性より原発性腹膜癌IV期と診断され,白金製剤を中心とする化学療法を受けた.初発の32カ月後,多発性脳転移を発症し,サイバーナイフ治療を受けた.その後,後腹膜リンパ節転移が明らかになり,腰仙椎部と右内耳道内の髄膜転移も発症した.われわれは頭部病変に対するサイバーナイフ治療,腰仙椎部の髄膜転移に対するトモテラピー,全身化学療法(イリノテカン・マイトマイシンC,カルボプラチン・シクロフォスファミド,ペグ化リポソームドキソルビシン),前頭部皮下にOmmaya reservoirを留置して行う髄腔内化学療法(メソトレキセート・シタラビン・プレドニゾロン)を交互に行った.脳転移発症後のPerformance status(PS)は0~1で,髄膜転移発症後のPSは2であった.下肢の運動障害,難聴は改善しなかったが,長期間自宅で日常生活を送ることができた.神経症状が増悪したため,最後の7週間を病院で過ごした後,脳転移発症の30カ月後,髄膜転移発症の16カ月後に永眠した.中枢神経系転移の治療には定型的なものはないが,各症例の病態に応じた複数の治療法を組み合わせることにより,延命と症状の緩和を図ることができると考えられた.〔産婦の進歩64(2):142-149, 2012(平成24年5月)〕
著者
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笠原 恭子
医仁会武田総合病院
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山本 嘉昭
医仁会武田総合病院
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笠原 恭子
医仁会武田総合病院産婦人科
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鞠 錦
医仁会武田総合病院産婦人科
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林 香里
医仁会武田総合病院産婦人科
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山本 嘉昭
医仁会武田総合病院産婦人科
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