重症のHIT(Heparin-induced Thrombocytopenia:ヘパリン起因性血小板減少症)を発症した子宮体癌術後の1症例
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概要
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子宮内膜癌I期,卵巣顆粒膜細胞腫に対する手術後に腹腔内出血のために再開腹止血術を行い,ヘパリン使用中,重症のHITを発症した症例を経験した.本症例は術後14日目に,突如明らかな血小板減少と多臓器不全を発症し,汎発性血管内血小板凝固症候群(DIC),劇症肝炎を疑い抗凝固療法を行ったが,翌日死亡した.死亡後,HITを疑い凍結保存してあった血清を用いて抗ヘパリンPF4複合体抗体検査を行い陽性,ヘパリンナトリウムによる血小板凝集試験も陽性で,治療に用いたダナパロイドナトリウムは血小板凝集試験が陰性であったことから,術中から行った動脈圧測定,および術後中心静脈ラインの維持に用いた少量のヘパリンナトリウムが原因で重症のHITを発症し死亡した症例と考えられた.ヘパリンは日常よく用いられる薬であり,少量でもこのような重篤な副作用があることを多くの産婦人科医師も認識する必要があると思われた.また本症例では,ペニシリンショックの既往というアレルギー体質や,大量出血による血小板機能が亢進し,これらの因子がHITの原因とされる自己抗体の産生などに影響した可能性も否定できない.〔産婦の進歩57(3):279-283,2005(平成17年8月)〕
- 近畿産科婦人科学会の論文
著者
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山本 嘉昭
医仁会武田総合病院
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山本 嘉昭
滋賀医科大学産科学婦人科学教室
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山本 嘉昭
滋賀医大
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三野 直純
滋賀医科大学産科学婦人科学教室
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三野 直純
社会保険滋賀病院産婦人科
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岩下 寿子
社会保険滋賀病院産婦人科
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