妊娠悪阻治療中に意識障害から判明した脳膿瘍の1例

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概要　脳膿瘍は中耳炎や敗血症などが病因になる脳実質の限局性化膿性病変である．以前は死亡率が40～60％程度と高率であったがCTが登場した1970年代以降早期診断が可能になり，抗菌薬や脳外科手術の進歩により死亡率は約10％程度にまで減少した．しかし，依然として脳室穿破や小脳発症の膿瘍は死亡率の高い疾患である．症状は頭痛や嘔気，嘔吐，眩暈などが多く，妊娠初期に発症すると重症妊娠悪阻，また妊娠中期から後期，産褥期などに発症すると妊娠高血圧症候群やPRES（posterior reversible encephalopathy syndrome）などと鑑別する必要がある．今回われわれは妊娠初期に嘔気，嘔吐を呈し，意識障害発生により精査で脳膿瘍と判明した1例を経験したので報告する．症例は28歳で，妊娠5週時に嘔気，嘔吐，頭痛，眩暈を主訴に前医を受診した．前医で妊娠悪阻と診断され，輸液療法が行われたが尿ケトン体が強陽性となり，眩暈も持続しWernicke脳症が疑われるとの理由から当院へ紹介受診した．当院入院後は前医からの妊娠悪阻の治療を継続したが，入院3日目に突然意識レベルが低下し，頭部横断単純CT検査を施行したところ右小脳内に淡い低濃度領域を認めた．造影CTでは右小脳内に中心部が低信号のためリング状に造影される嚢胞性腫瘤を認め，その周囲は低信号であった．MRI横断DWIで右小脳内に43mmの高信号を呈する腫瘤性病変を認め脳膿瘍と診断し，右小脳膿瘍ドレナージ術を施行した．本症は術後26日目に歩行障害，ろれつ困難などの麻痺症状が残ることなく軽快退院となった．〔産婦の進歩64（2）：114-119，2012（平成24年5月）〕

妊娠悪阻治療中に意識障害から判明した脳膿瘍の1例

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