アワビ肝膵臓中のフコイダン分解酵素について : (1)粗酵素とCM一セルロース非吸着画分
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概要
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フコイダンの構造研究に役立つような酵素の調製を目標として,アワビ肝膵臓に含まれるフコイダン分解酵素を検討し,次の結果を得た. 1. 肝膵臓ホモジネートより硫安30〜50%飽和で沈殿する画分(粗酵素)にフコイダナーゼとフコイダンスルファターゼを認めた. 2. 粗酵素の両活性は, pH 5.0でCM-セルロースに級着されない画分と吸着される画分(酵素II)に分けられた.吸着されない画分のDEAE-セルロースカラムクロマトグラフィーによって,フコイダナーゼとフコイダンスルファターゼ活性がgradient elutionの同じ溶出位置に認められた(この画分を酵素Iとする).しかし両活性の分離には成功しなかった. 3. 酵素I中のフコイダーゼとフコイダンスルファターゼの至適pH, pH安定域,至適温度,熱安定性は類似していて,いずれか一方の活性をpHまたは熱によって破壊ないし抑制することは困難と考えられた. 4. 還元糖の生成速度は,粗酵素では時間とともに小となるのに反し,酵素Iでは92時間までほぼ一定であった.硫酸イオンの生成速度は粗酵素,酵素Iのいずれでも時間とともに小さくなった. 5. 生成した糖は,粗酵素ではほとんどフコースであったが,酵素Iではフコースはほとんど生成されず,中性オリゴ糖が主要生成糖であり,その重合度は反応時間とともに小となる傾向を示した.オリゴ糖硫酸エステルはいずれの場合も中性糖に比べてわずかしか得られなかった. 以上より酵素Iにはフロイダンスルファターゼと,フコイダンをオリゴ糖にまで分解するがフコースにまでは分解しないフコイダナーゼとが含まれ,これらはフコイダンの部分分解にとって有力な手段を提供するものと考えられた.またフコイダンまたはその部分分解物をフコースにまで分解する酵素も粗酵素中に存在するが,これはCM-セルロースによって酵素Iとは分離されるものと考えられた.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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