採卵時卵胞液中inhibinと卵成熟および受精能との関係

概要

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　inhibinにはβサブユニットの違いによりinhibin Aとinhibin Bがあり，性成熟期女性では主に卵巣で産生され，下垂体のFSH産生・分泌を抑制する作用が知られている．inhibin Bは卵胞期前期に発育卵胞で，inhibin Aは卵胞期後期に主席卵胞から産生・分泌されると推定されているが，inhibinの卵巣局所での役割はいまだ明らかではない．そこで卵胞局所でのinhibinの役割解明を目的として，卵胞液中inhibin濃度と卵の成熟度，受精能および卵胞液中ステロイドホルモン濃度との関係につき検討した．　Long protocol法で卵巣刺激を行った卵管不妊IVF患者を対象とし，採卵時の卵胞液を患者の同意を得て採取した．卵胞液中inhibin A，inhibin B濃度はsandwich ELISA法で，卵胞液中estradiol，progesterone，testosterone濃度はRIA法で測定した．　卵胞液中inhibin A濃度は採取した卵の成熟度との間に有意な関係を認めず，また，採取した卵の受精能の間にも相関を認めなかった．一方，採取した卵の成熟度が低い卵胞液中inhibin B濃度は，成熟卵であった卵胞液中inhibin B濃度に比べ有意に高く（p<0.001），受精しなかった卵の卵胞液中inhibin B濃度は受精した卵の卵胞液中inhibin B濃度に比べ有意に高かった（p<0.001）．卵胞液中inhibin A濃度と卵胞液量は有意な相関を示さなかったが，卵胞液中inhibin B濃度は卵胞液量との間に負の相関を示した．また，卵胞液中inhibin A濃度は卵胞液中progesterone濃度と正の相関を示したが，卵胞液中inhibin B濃度と卵胞液中ステロイドホルモン濃度との間には相関を認めなかった．これらの成績より，inhibin Aは顆粒膜細胞のステロイドホルモン産生および黄体化に関連する1つの因子であることが示唆され，一方inhibin Bは卵の成熟度ならびに受精能と強い負の相関を示し，卵成熟に対し抑制的に働く可能性が示唆された．〔産婦の進歩56（2）： 62- 69，2004（平成16年5月）〕

採卵時卵胞液中inhibinと卵成熟および受精能との関係

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