外陰部に生じたpilonidal sinusの1例

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Pilonidal sinusは一般的には仙骨部位にもっともよくみられるものであるが，今回，われわれは，女性の外陰に生じたpilonidal sinusの1例を経験した．症例報告数も少なく，通常婦人科領域で扱われることがまれな疾患であり，当初診断に難渋した．症例は35歳，2回経妊0回経産．外陰痛を自覚し，外陰部から悪臭を伴う茶褐色の血液の流出と排膿を認めたため当科を受診した．初診時，恥骨前方の皮下にくるみ大のやや扁平な腫脹があり圧痛を認めた．また陰核の上方に小瘻孔を認め，同部位より排膿を認めた．血液検査上，炎症反応の上昇を認め細菌感染の関与が疑われたため，抗生剤の内服にて経過をみたところ，症状はいったん軽快したものの半年後に再燃し，炎症反応の再上昇を認めた．鑑別診断として，月経瘻や異所性子宮内膜症などの可能性も考慮したが，月経との関連性は明らかではなく，CT・瘻孔造影にて，恥丘から恥骨結合下縁に至る瘻孔を認めた．pilonidal sinusの可能性を疑い，初診から約10ヵ月目に外陰瘻孔切除術を施行した．切除標本では，瘻孔内に毛髪の存在を認めpilonidal sinusに一致する所見であった．本症例は一期的に完全切除することができ，術後4ヵ月間，再発なく経過している．本疾患の成因としては，毛髪が外力によって脆弱な皮膚に埋入することが誘因となる後天説が示唆されている．一般的に，男性の仙骨部に好発するが，腋窩，臍部，足底，指間，乳頭，陰茎，女性の外陰などの例も報告されている．外陰に生じたpilonidal sinusで，初回手術時に診断がついているものは報告がなく，部分切除にとどまった症例では再発を認めているものもある．いずれの報告例でも，病巣の完全摘出の必要性が強調されており，本症では術前に本疾患を疑うことができ，良好な経過をたどっている．〔産婦の進歩60（4）：327-331，2008（平成20年11月）〕
近畿産科婦人科学会の論文

外陰部に生じたpilonidal sinusの1例

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