プロピオン酸類縁物質の抗微生物作用に関する研究(第2報) : Escherichia coliに対するプロピオン酸類縁物質の増殖抑制
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概要
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プロピオン酸ならびにこれと類似の構造をもつ数種の比較的毒性の少ない物質を選んで, E. coliに対する増殖抑制作用を比較した. (1)プロピオン酸は酢酸および酪酸よりもつよい増殖抑制を示す.表面張力の低下による細胞膜機能の変化,代謝物質とのCoA争奪など,低級脂肪酸に共通な作用機構の他に,β-アラニン代謝,ピルビン酸代謝に対する拮抗作用がその増殖抑制作用の主体をなすものと考えられる. (2)タウリンの作用はプロピオン酸に比べて弱く,高濃度のタウリンによる阻害も少量のβ-アラニンの添加によって完全に回復される. しかし,プロピオン酸の効果がタウリンの併用によって顕著に増大することから,両者のβ-アラニン代謝に及ぼす作用機作は相異なる可能性がある. (3) β-ヒドロキシプロピオン酸はプロピオン酸に近い抑制効果を示す. β-アラニンおよびピルビン酸による阻害の回復が認められるが,酢酸の添加はプロピオン酸と異なり効果がない. β-アラニンによる回復の程度がプロピオン酸よりも小さく,また培地pHの増殖抑制に及ぼす影響がプロピオン酸の場合と著しく異なる. (4) β-クロルプロピオン酸は, β-アラニン,酢酸,ピルビン酸による阻害の回復がまったく認められない点で上の三者とは異なる. β-フルオルプロピオン酸はプロピオン酸と類似の増殖阻害作用を呈し, β-クロルプロビオン酸のごとき特異な性質は示さない.酵素反応に対するこれら諸物質の阻害様式の異同に関しては,目下検討を加えつつある.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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