熟成蒸留酒の融解潜熱について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
DSCを用いてエタノール水溶液および長年月熟成のウィスキー,ブランデー,エタノール水溶液の熱分析を行い,蒸留酒の熱的挙動と熟成の関係について研究を行った. (1) 熟成蒸留酒,エタノール水溶液いずれも,その融解サーモグラム上に2つの吸熱ピーク1, 2と1つの発熱ピーク3が観測された. (2) 熟成蒸留酒の各ピークの出現温度は,同エタノール濃度のエタノール水溶液と同じで貯蔵期間による差異は認められなかった.一方,各ピークの面積から算出した融解熱については,ピーク2およびピーク3に大きな差異が認められ,熟成蒸留酒では著しく減少していることが認められた.熟成蒸留酒におけるピーク2の減少は貯蔵期間に比例していた. (3) 蒸留酒中の主要微量成分である酸,エステル,アルデヒド,フーゼル油,樽材浸出物等が融解サーモグラムに与える影響について検討を行った.エステル,アルデヒド,フーゼル油の場合,いずれも含有される濃度範囲においては,その影響はほとんど認められなかった.酸および樽材浸出物はピーク2の融解熱を減少させるが,熟成に伴う熱量値の減少は,これらの影響よりもはるかに大きいものであった. (4) これらの実験結果は,熟成蒸留酒中ではエタノール分子が強く束縛されていることを示しており,熟成した蒸留酒やエタノール水溶液が固体に近い凝集状態に移行し,安定な液体構造が形成されていると考えられる.熟成によってエタノール特有の刺激が減少する蒸留酒の香味の円熟をよく説明しているものといえる.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
著者
関連論文
- ワイドレンジ鮮度センサの開発
- OME2000-92 ワイドレンジ鮮度センサの開発
- K値を用いる魚肉の生可食限界の推定に関する理論的考察
- OME2000-82 バイエンザイムリアクターを用いたオルニチン計測
- F09-(1) 生物ものさし : バイオセンサー
- バイエンザイムリアクターを用いたオルニチン計測
- リアクター型バイオセンサシステムによるマイクロ波乾燥茶葉中のビタミンC計測
- 鶏肉のマイクロ波通風乾燥と復水性
- 抗酸化能のバイオセンシング
- 熟成蒸留酒の平衡蒸気成分
- 熟成蒸留酒の融解潜熱について
- 熟成蒸留酒におけるOH基プロトンのNMRスペクトル
- 酢酸水溶液および熟成食酢の融解潜熱について
- マイクロ波を利用した馬鈴薯の通風乾燥
- マイクロ波を利用した食品モデル試料の通風乾燥とその機構について〔通風マイクロ波乾燥に関する研究-1-〕
- 永年樽貯蔵のシェリービネガーの融解潜熱
- 永年樽貯蔵のシェリービネガーの平衡蒸気成分
- 食品製造、醸造におけるエレクトロヒ-ト--新世紀に期待する実用研究(1) (特集 機関誌100号記念特集)
- 香りの研究,新世紀への展望
- cis-3-ヘキセノールおよび酢酸メンチルの硫酸ドデシルナトリウムミセルへの溶解機構と蒸気分圧
- ウイスキ-とブランデ-熟成の謎 (酒の科学)
- 調香,可溶化,蒸留における物理化学的研究
- 硫酸ドデシルナトリウムミセルに溶解したゲラニオ-ル-ゲラニルアセテ-ト2成分系香料溶液の蒸気成分
- ドデシル硫酸ナトリウムミセルに溶解したイオノンおよびシトラ-ルの蒸気圧
- ドデシル硫酸ナトリウムミセルに溶解したゲラニオ-ルおよびゲラニルアセテ-トの蒸気圧
- 熟成食酢にOH基プロトンのNMRスペクトル
- 熟成食酢の平衡蒸気成分