細胞組織学的にみたナシ果実の発育と肥料三要素との関係(第3報) : 枝梢内炭水化物ならびに窒素の組成と果肉細胞の分裂増殖との関係
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概要
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1. 二十世紀ナシを約1か年間砂耕し, 施す窒素, りん酸および加里濃度を変えることによつて, 冬季の枝梢内炭水化物(還元糖, 非還元糖, 全糖, でん粉全炭水化物)ならびに窒素(可溶性窒素, 不溶性窒素, 全窒素)の組成を人為的に変化させ, それらの組成と春季の果肉細胞の分裂増殖との関係を明らかにしようとした。2. 冬季(2月8日)における枝梢内炭水化物組成については, でん粉が圧倒的に高い含量割合を示したが, その含量と各要素濃度との関係は, 窒素では80ppmにおいてもつとも含量が高く, ついで0ppm, 160ppmの順であつた。しかし, りん酸および加里濃度の間では, 0〜160ppmの範囲において濃度の高いものほど含量が, 高い傾向がみられた。窒素組成については, 各成分とも窒素の施用濃度の上昇に伴なつて明らかに増加したが, りん酸および加里濃度の間では, 総じて濃度の高いものほど減少する傾向がみられた。3. 冬季の枝梢内炭水化物ならびに窒素の組成と果肉細胞数(4月20日, 満開後10日)との間の相関関係を調べた結果, 果肉細胞数はでん粉および全炭水化物含量ときわめて高い正の相関関係(r=+0.958, +0.947, いずれも1%水準で有意)にあり, また還元糖および全糖含量とかなり高い正の相関関係(r=+0.602, +0.700, いずれも5%水準で有意)にあることが明らかとなつた。なお有意相関は得られなかつたが, 果肉細胞数は総じて窒素成分とは負の関係にあることがうかがわれた。4. 細胞分裂停止期ごろ(5月8日, 満開後28日)における新梢内炭水化物ならびに窒素の各組成と果肉細胞数との関係を調査した結果, いずれの成分についても有意相関は得られなかつたが, 傾向としては果肉細胞数は炭水化物成分とは負, 窒素成分とは正の関係にあることがうかがわれた。
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