温州ミカンの水分均衡に関する研究 (第3報) : 地表面かん水または葉面散水処理による葉の W.S.D. の経時的変化
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概要
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砂壌土をつめた大型陶管植の温州ミカンを用い, 夏季と冬季の土壌乾燥時に, 地表面かん水と葉面散水を行ない, 根から吸水させた場合と, 葉面から吸水させた場合の, 高さ1m内外に位置した葉のW. S. D. と水分含量の変化を経時的に追跡して, 葉内の水分均衡からみたかん水および散水処理の影響を調査した。1. 夏季の地表面かん水により, 葉のW. S. D. は9時のかん水処理後30分で明らかに下降し, 1時間後には適湿に保持した対照区に近い状態まで回復した。葉内水分含量の変化はW. S. D. のように急速ではなかつたが, 短時間のうちに認められた。2. 冬季においても地表面かん水すると, 葉のW. S. D. の下降と葉内水分含量の増加が認められたが, それらの変化は夏季の場合よりも非常に緩慢であつた。すなわち, 葉のW. S. D. はかん水処理の4時間後にようやく対照区の程度まで回復し, 葉内水分含量は3時間後にはほぼ回復した。3. 夏季に, 土面への水の侵入を防ぎながら葉面散水を行なつたところ, 葉のW. S. D. は10時の散水開始後急激に下降し始め, 3時間でほぼ対照区の状態まで回復した。葉内水分含量は2時間後には対照区の状態まで回復した。4. 冬季においても葉面散水すると, 葉のW. S. D. は次第に下降し続け, 3時間後にはほぼ対照区と同程度まで回復した。一方の葉内水分含量はかなり急速に増加して, 2時間後には対照区の状態まで回復した。以上の結果からみて, 葉の水分不均衡を是正する意味では, 夏季は根から吸水させる方法で十分な効果が得られ, 冬季は逆に葉面から吸水させる方法が効果的である。ただし, 一般圃場で行なう散水かんがい法では, 葉面からの吸水とともに根からの吸水も同時に行なわれるので, かん水効果が高いものと考えられる。
- 園芸学会の論文
著者
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鈴木 鉄男
愛知園試・内海分場
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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金子 衛
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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鳥潟 博高
愛知県農業総合試験場, 園芸研究所, 内海試験地
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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金子 衛
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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