リン酸および石灰の施用が温州ミカンの生育と結実に及ぼす影響
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概要
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リン酸施用量と石灰施用有無の組合わせ処理が, 温州ミカンの生育および結実に及ぼす影響を明らかにするため, 強酸性の洪積層埴壌土のほ場に栽植した幼樹を用いて, 1960年から10か年間, 試験を継続した.1. 樹体生育量に及ぼす処理の影響は, 樹体が比較的小さい1962年頃までは, 新しよう伸長量, 葉数および幹周に有意差が認められ, 石灰施用区が全般的にすぐれた. また石灰無施用区では, リン酸の肥効が認められ, P0区は明らかに劣り, P1区もやや劣つた. しかし1963年度では, 前年度の傾向はみられたものの有意差はなくなり, 1964年以降の結果樹では処理区の間に差がなくなつた.2. 1963年頃から, 石灰無施用区において枝葉に石灰欠乏症類似の徴候がみられ, 1964〜′65年にかけて夏枝の落葉や, 枝先の枯込みをみた. しかし, 1968年以降は次第に回復した.3. 着花数は, 1964年度では有意差があり, P0区で明らかに少なく, リン酸施用の効果が認められ, P0+Ca区P1区もやや少ない傾向があつた. しかしその後は年による変異が大きく, 処理区の間に差がなくなつた. 果実収量については, 1964年度のP0区とP1区でやや少ない傾向がみられたほかは, 明らかでかなつた.4. 平均果重は, 1968年度までは処理区間に全く差がみられなかつたが, 1969年度では有意差があり石灰無施用区で大きかつた. これは1樹当たりの着果数の差にもとずくものと思われる. 果皮の着色指数と果皮歩合には, ほとんど差がなかつた.果汁中の全糖含量は, P0+Ca区とP0区でわずかに低く, 1966年度と1967年度には5%水準で有意差があつた. クエン酸含量は, 1%水準で有意差があり, 各年度とも石灰施用区では明らかに低く, リン酸施用量との関係では, 無施用区でやや高い傾向があるほかは, 明らかでなかつた. 糖分率は石灰施用区で高く, また, リン酸無施用区では低い傾向があつた.5. 葉内P含量は, リン酸施用量の多少を反映してリン酸無施用区は低く, 多量区では高い含量を示した. Ca含量は石灰施用区で明らかに高く, また, リン酸無施用区はやや低い含量を示した. Mg含量は石灰無施用区で高く, その場合, リン酸施用量がますにつれて低下した.6. 土壌中の有効態P含量は, リン酸施用量をよく反映しており, 無施用区ははなはだ低く, 施用量がますにつれてP含量も高まつた. ただし, 深さ30cmの土壌では10cmに比べて, その含量は明らかに低かつた. 土壌のpH, 置換性CaO含量ならびに石灰飽和度は, 石灰施用区で著しく高く, 石灰無施用区では, リン酸施用量がますにつれてやや高くなつた.
著者
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鈴木 鉄男
愛知園試・内海分場
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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金原 敏治
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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榊原 正義
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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深井 尚也
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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深井 尚也
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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榊原 正義
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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金原 敏治
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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