カンキツ幼樹の生育と結実に及ぼす時期別土壌水分含量の影響
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概要
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砂壌土を満たした陶管に温州ミカン幼樹を栽植し, 夏秋季の生育時期を5〜6月, 7〜8月, 9〜10月の3期間に区分し, これに土壌水分含量を多湿 (pF1), 中湿 (pF2), 少湿 (pF3) の3段階として組み合わせた処理を行ない, 樹体生育, 収量ならびに果実の品質に及ぼす影響をみた。1. 新梢伸長量, 葉数, 幹周および樹容積からみた樹体生育量は, 各時期とも多湿区と中湿区ですぐれたが, 7〜8月少湿区は最も劣り, 次いで9〜10月少湿区で劣つた。第2年次における着花数の比較では, 7〜8月多湿区が最も多く, 次いで5〜6月多湿区が多かつた。これに反して, 7〜8月少湿区は最も少なく, 5〜6月少湿区もやや少なかつた。なお, 着花数と前年の秋枝発生数との間には, 負の相関があつた。2. 各時期とも, 少湿区では果実の肥大が明らかに劣り, 処理時期の早い区ほどその傾向が強く, 幼果はかなり落下した。収量は多湿区でまさり, 少湿区は明らかに劣ることが認められ, 平均果重についても同じ傾向があつた。果実の着色は, 9〜10月少湿区で最もすぐれ, 5〜6月少湿区と7〜8月少湿区では著しく劣つた。果皮歩合は9〜10月少湿区と7〜8月少湿区で大きかつた。果汁中の可溶性固形物含量およびクエン酸含量は, 9〜10月少湿区で最も多く, 食味濃厚であつた。これに反して, 5〜6月少湿区と7〜8月少湿区は甘味比が低く, 9〜10月多湿区は食味が淡白であつた。3. 葉のW. S. D. とD. P. D. は各時期とも少湿区で著しく高く, 多湿区では低いことが認められ, 見かけの同化量と蒸散量は多湿区で多く, 少湿区では少なかつた。葉内N含量は少湿区で高く, 多湿区で低い傾向があり, P含量はその逆であつた。少湿区の土壌では三相分布の液相が明らかに小さく, 気相は逆に大で, 硬度が大きかつた。pHは多湿区で高く, 塩類濃度とNO3-N含量は少湿区で高かつた。以上の結果からみて, 樹体生育量, 収量の面では, 各時期とも大体において, 多湿〜中湿がすぐれていたが, 果実の品質を考慮すると, 5〜6月多湿〜中湿, 7〜8月中湿, 9〜10月少湿という組み合わせ処理が望ましいようである。
- 園芸学会の論文
著者
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鈴木 鉄男
愛知園試・内海分場
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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金子 衛
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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田中 実
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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金子 衛
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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