夏季の土壌溶液全吸引力が温州ミカン幼樹の生育と結実におよぼす影響
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概要
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壌土をつめた鉢植の温州ミカン幼樹を供試して, 7〜8月に土壌水分と施肥濃度を組合せた処理を行ない, 土壌溶液の全吸引力 (水分吸引力+浸透吸引力) が生育と結実におよぼす影響を調査した。1. 樹体生育量は, 水分吸引力が 0.5 bar 以下で, 浸透吸引力は 2.0 bar 以下で良好であり, 全吸引力が2.5bar 以上になると生育が阻害されるようであつたが, その場合とくに水分吸引力の影響が大きいようであつた。2. 果実の肥大も, 水分吸引力が 0.5 bar 以下, 浸透吸引力は 2.0 bar 以下の場合に良好で, 全吸引力が2.5bar 以上になると肥大が抑制された。果形指数は水分吸引力が高いと小さく, 果形が腰高となつた。着色指数は全吸引力, とくに浸透吸引力が低い区ほど大きかつたが, 水分吸引力が高い区は概して着色不良であつた。果皮歩合は全吸引力の高い区で大きかつた。3. 果汁の可溶性固形物含量は, 全吸引力が 3.0 bar以下の区で多く, 水分吸引力や浸透吸引力が高い区ほど少なかつた。これに反してクエン酸含量は全吸引力の低い区では少なかつたが, 水分吸引力や浸透吸引力が高い区は非常に多いため, これらの区では甘味比が低く, 食味不良であつた。4. 葉のW. S. D. とD. P. D. は水分吸引力が高まるにつれて上昇し, さらに浸透吸引力がますにつれて若干上昇した。見かけの同化量と蒸散量は, 水分吸引力の高い区で極端に減少し, 浸透吸引力が高い場合もその傾向があつた。細根の活力度でも同じような傾向がみられた。5. 葉内のN, PおよびK含量は, 浸透吸引力が高い区で多く, 低い区では少なかつたが, Ca含量は逆の傾向を示した。以上の結果から, 温州ミカンの生育と結実に対しては, 夏季の水分吸引力は 0.5 bar 以下が, 浸透吸引力は2.0 bar 以下が望ましく, 全吸引力では2.5〜3.0 bar 付近に生育阻害の限界があるように考えられる。
- 園芸学会の論文
著者
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鈴木 鉄男
愛知園試・内海分場
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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金子 衛
愛知県農業総合試験場•内海試験地
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鈴木 鉄男
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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金子 衛
愛知県農業総合試験場 内海試験地
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