そ菜栽培における作物群落内の炭酸ガス濃度低下

概要

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そ菜類を栽培するにあたつて, 光合成を充分に行なわせるために重大な問題の一つと考えられるCO2濃度低下を考察するために, 赤外線ガス分析計を用いて, 群落内外のCO2濃度を測定した。被検ガスは, 自動制御装置付きの吸引ポンプで断続的に, 作物群落内外に配したプラスチック管を通して毎分0.3lの流量で採取した。露地ほ場の作物群落内で観測された快晴日の最低CO2濃度は風のあるときが275〜285ppm, 風のないときは205〜250ppmであつた。この低下は作物上の平均風速が毎秒1.5m以下のとき, 密な作物群落においておきた。ガラス室やプラスチックハウス内の大気中では, CO2欠乏は露地以上に顕著だつた。葉や土壌呼吸によつて蓄積された多量のCO2は早朝の光合成に有益であつた。しかしすぐにその量は室外以下になつた。CO2減少率が増加する限界照度は, 作物上で3〜5kluxのときにおこると推察された。換気窓が閉ざされたままであれば, CO2濃度はついには80〜85ppmにまで下つてしまつた。作物がよく繁茂しているプラスチックハウス内で, 晴天日にCO2プロファイルを測定したところ, CO2低下は1日に2回, つまり換気の前と後におこつた。最初の低下ではCO2量は105ppmまで下り, 最低濃度層は作物の高さの中央部にあつた。天窓が25cm開放されていると, 二度目の低下は減少し, その濃度は140ppmとなつた。一方, 換気扇の使用により, 濃度低下は大幅に軽減できた。また最低濃度層も作物の高さ内の広い層にわたつていることが観測された。午前中, 換気窓が閉められている間に, 群落内のある特定の部分だけの濃度低下を防ぐ目的で空気循環扇を使用したところ, fan から8m離れたところでは作物群落内外のCO2濃度均一化に役立つていないことがわかつた。CO2濃度低下は葉面積密度によつても大きく影響をうけた。ビニールフィルムでおおわれた育苗床中のCO2濃度は, 65〜70ppmにまで低下した。また, 葉面積密度の高い施設内では, 作物は換気まで長い時間, CO2平衡状態におかれていることがわかつた。これらの結果から, 快晴日の施設内のCO2濃度低下をひきおこす主要因は, 換気速度と葉面積密度であることが明らかとなつた。換気窓が開かれていれば, 一般にCO2濃度低下はさけられると予測されるが, 換気率と純同化率との関係の図をみると, 経済栽培でのガラス室やプラスチックハウスで最も普通な換気率, 1時間に20〜30回では, 群落内へのCO2供給が不足しており, 作物の充分な光合成を望めないことがわかる。最後に実際的な見地から, 換気前のCO2濃度低下中のCO2増与の有用性について考察を加えた。
園芸学会の論文

著者

伊東正
千葉大学園芸学部

そ菜栽培における作物群落内の炭酸ガス濃度低下

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