そ菜の光合成特性とその栽培的意義 (第6報) : 換気扇を利用した大型ビニールハウス内のトマトの生育, 収量, 品質

概要

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第1実験においては, 換気扇による強制換気をしているビニールハウスでトマトを栽培し, ハウス内の微気象とトマトの生育, 収量について調査した.ハウス奥行46mを水平的にみて, 空気取入口から換気扇まで, 温度, 風速, CO2濃度の著しい傾度があることを観測した, 風速が20〜30cm•sec-1に低下すると, 生育層内部で著しいCO2濃度低下が起きた. また, 気温は空気取入口から奥に進むにつれて高くなり, 5月末に放射強度がほぼ8Kcal•m-2.min-1に達したころには, ハウス内外の温度差は5°Cとなつた.トマトの早期収量は, 吸気口付近の強い風によつてかなり減少した. しかし, ハウス内部の換気不良なところから収穫した果実では, 遊離酸, 可溶性固形分, アスコルビン酸いずれもその含有量が低下した. また, 収穫後の呼吸率も高まつた. 一般に, 収穫期間中, 果実内の遊離酸, 水溶性糖類は漸減する傾向にあつたが, 換気不良はその減少率を助長した.一方, よく換気されたところのトマトでは葉重/葉面積比, 葉乾物率が高く, 節間長が短かくなつた. また, このような葉では光合成能力も高かつた. 一方, 葉の呼吸率は換気不良なところで生育した株の葉で高かつたが, Q10値は逆に低下した. 葉の葉緑素含量も換気によつて左右され, 換気不良なところで生育した株では, クロロフィルaが少なく, クロロフィルbが多く, クロロフィルa/b比が, 著しく低下した.また, 実用的な見地から, 光合成を十分に行なわせるに足るCO2の輸送と室内外の温度差を低下させるという二つの条件を満足するための必要換気量について検討した. その結果トマトの光合成効率は換気率の増加にともない増加し, およそ毎時40回近くの換気率で光合成効率の増加率は低下した. また光合成効率は葉面積密度によつても影響をうけ, 葉面積密度が高くなると, 光合成効率は低下した. トマト葉の光合成速度は, 風速が50〜90cm•sec-1までは風速の増加とともに増加したが, これ以上に風速が増加すると, 光合成速度は漸減した.CO2の輸送と, 昇温抑制の二つの条件を満足するための換気には, ハウス面積100m2に対して毎分140m3の換気量, 生育層内の風速, 毎秒30cm, 生育層上の風速, 毎秒50cm, 換気率が毎時30〜40回程度にするのが望ましいことがわかつた.

著者

伊東正
千葉大学園芸学部

そ菜の光合成特性とその栽培的意義 (第6報) : 換気扇を利用した大型ビニールハウス内のトマトの生育, 収量, 品質

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