果実に及ぼすガス濃度の影響 (第5報) : ナツミカン果実に及ぼす炭酸ガス濃度の影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
各種果実に及ぼすガス濃度の影響を調べ, 最適貯蔵ガス条件を検討する研究の一環として, ナツミカン果実に及ぼす炭酸ガス濃度の影響を調べた. 1970年の実験では4°C下で0, 3.3, 16, 25%区を, 20°C下で0, 3.5,13, 23%の処理区を設け, 1971年には4°C, 20°C下ともに0, 2.5, 5, 10, 15, 20%の処理区を設けた. 混合ガスは低酸素濃度の影響を除くため, 炭酸ガスと空気を混合して作成し, 酸素濃度を15.8%以上に保つた. 4°C下では1970年は49日, 1971年は66日間貯蔵し, 20°C下では両年とも約1か月貯蔵して調査した.1. 4°C下では1971年にへたのかつ変が見られ, 炭酸ガス5%以上で抑制された. 可溶性固形物含量はいずれの区も処理期間中変化しなかつた. 滴定酸度は1970年には貯蔵期間中に減少傾向が見られ, 炭酸ガス25%下でやや多く減少した.1970年では炭酸ガス16%以上, 1971年では10%以上の区で果皮率, 果皮新鮮重が増加し, 浮皮気味になり, その後, 水浸軟質状に変わり, アルベドが黄色化し, 砂じようの赤味が消えた. またこれらの果実では苦味が強く, 発酵臭が生じ, エタノール蓄積も見られた. 一方, 1971年には炭酸ガス2.5%以下の区では食味が淡白, す上がり気味な果実が見られ, 5%区が最良の食味を示した. この他に1971年には果皮面に小かつぽんを生じたが, 5%以上の区では発生が抑制された.2. 20°C下では, へたのかつ変は1970年には炭酸ガス3.5%, 1971年には5%以上の区でやや抑制されたが, 滴定酸度, 可溶性固形物含量には両年とも処理間に明確な差が見られなかつた.1970年には炭酸ガス13%, 1971年には5%以上の区で異臭が生じたが, 発酵臭や強い苦味は感じられず, エノタール蓄積も見られなかつた.3. ナツミカンでの結果より推定して, カンキツのCA貯蔵における炭酸ガスの利点はへたかつ変, ピッティングなどの抑制にあり, 問題点は異味異臭, 浮皮と果皮水分増加などで, 湿度条件が重要な要因になると思われた. ナツミカンの4°C下, 2か月間の貯蔵では炭酸ガス5%近くが最適貯蔵条件と思われた.異味異臭発生について, 果皮水分増加, ガス拡散抵抗, 果実内ガス組成ならびにエタノール蓄積と関連づけて考察した.
著者
関連論文
- 果実に及ぼすガス濃度の影響 (第5報) : ナツミカン果実に及ぼす炭酸ガス濃度の影響
- 果実に及ぼすガス濃度の影響 (第4報) : 夏ミカン果実に及ぼす酸素濃度の影響
- 果実に及ぼすガス濃度の影響 (第6報) : リンゴ紅玉, 国光果実に及ぼす炭酸ガス濃度の影響
- 果実に及ぼすガス濃度の影響 (第9報) : リンゴの国光, 紅玉果実に及ぼす酸素濃度と炭酸ガス濃度の影響
- 果実に及ぼすガス濃度の影響 (第10報) : リンゴ「紅玉」のCA貯蔵における酸素濃度と炭酸ガス濃度, ならびに収穫時期の影響
- 果実に及ぼすガス濃度の影響 (第1報) : リンゴ紅玉果実に及ぼす酸素濃度の影響
- 白肉桃大久保果実に及ぼす酸素濃度の影響 (果実に及ぼすガス濃度の影響-2,3-)