カンキツ類果実の生理および貯蔵に関する研究 : (第8報)温州ミカン果実の酸および糖の代謝
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
収穫後の温州ミカンの酸と糖の代謝について調べるために citrate-1,5-14C (pH 3.49), glucose-1-14C (pH7.0, G-1-14C) および glucose-6-14C (pH 7.0, G-6-14C) を0.1μCiずつ, ミカン果実の袋 (segment) に果皮を通して, 注射器で注入しトレーサー法で, これらの物質の代謝の模様を調べた.1. 注入された citrate-1,5-14Cは速やかに脱炭酸され, 注入後10日間で注入量の約1/3が14CO2として果実外に排出された. これに対しG-1-14CとG-6-14Cの代謝速度は比較的おそく, 排出された14CO2は50日間で全量の, それぞれ6.5%および6.3%であった.2. G-6-14Cからの14CO2とG-1-14Cからの14CO2の量比は, 注入後2, 3, 5, 10, 50日で, それぞれ0.34,0.37, 0.63, 0.68, 1.02で注入直後にはG-6-14CよりもG-1-14Cの脱炭酸速度が速く, 注入した glucose-14Cが, 当初 Hexose monophosphate pathway を経て分解され, 次第にこれた Embden-Meyerhof-Parnas 経路に移行して分解されることが示唆された.3. 注入した citrate-14C は果肉では速い速度で糖,アミノ酸, たんぱく, ペクチンに代謝され, 注入10日後には酸として存在するのは50%以下になる. これに対し glucose-14Cの代謝速度はゆるやかで, 注入50日後でもなお80%に近い量が中性区分に残存している.果実の可溶性区分のうち, glucose から酸, アミノ酸に移行するのは50日後に約20%である.アイソトープの注入の方法やpHなどなお実験技術上に問題が残されるが, 以上のように収穫後の温州ミカン果実に酸の速い分解系や糖の直接酸化系が存在することが明らかで, 品質向上のためこれらの代謝系の利用の可能性が示唆される.
著者
関連論文
- 本邦産柑橘果実の低温耐性と呼吸との関係について
- マスクメロン'Earl's Favourite'果実の貯蔵に関する研究
- 中晩性カンキツ果実の省エネルギー貯蔵について
- キュウリ果実の低温障害に伴う表皮構造の変化
- ウリ科果実の低温障害と果実組織切片からのイオン漏出について
- ウリ科果実の低温耐性と組織の膜透過性との関係について
- 青果物の低温障害に関する研究 : (第1報)キュウリ果実の低温障害と生体膜の変性について
- カンキツ類果実の生理および貯蔵に関する研究 (第6報) : 温州ミカンの貯蔵法の改良
- カンキツ類果実の生理および貯蔵に関する研究 (第3報) : 果実の予措乾燥に及ぼす風速の影響
- 柑橘類果実の生理および貯蔵に関する研究 (第1報) : 柑橘類果実幼果の呼吸とエチレン生成について
- 異なった湿度で予措乾燥した数種カンキツ果実の呼吸の変化
- ピーマン果実の低温処理による品質変化と低温障害発生機構 (第1報)
- カンキツ類果実の生理および貯蔵に関する研究 : (第8報)温州ミカン果実の酸および糖の代謝
- Chilling sensitivity of several vegetables by means of Arrhenius equation.
- 異なった温・湿度の予措処理が数種のカンキツ果実の品質に及ぼす影響
- カンキツ類果実の生理および貯蔵に関する研究-5-ミカン果実の有機酸代謝と予措乾燥
- カンキツ類果実の生理および貯蔵に関する研究-7-温州ミカン果実の収穫後の有機酸代謝〔英文〕
- Effect of High Temperature Treatment on the Quality of Strawberries during Storage.
- Alleviation of Chilling Injury of Ponkan Fruits by Using Sucrose Fatty Acid Esters.
- 青果物のCA-貯蔵に関する研究 トマト果実の熟度とCA-貯蔵効果